問題 79 ブース(Booth,C.)のロンドン調査に関する次の記述のうち。最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ロンドン市民の人口統計の作成が目的だった。
2 調査対象となった市民の自宅へ調査票を配布する郵送調査だった。
3 当時のロンドン市民の一部を調査対象とする標本調査だった。
4 貧困の主たる原因が、個人的習慣であることを明らかにした。
5 ロンドンの街を経済階層で分けした貧困地図を作成した。
1は×である。
ロンドンにおける貧困の状況を明らかにすることが目的だった。
2は×である。
迷った人もいるかもしれないが、当時の状況を思い浮かべた場合、郵送調査では、十分な回答を得ることは難しかったであろうと推測できるはずである。
3は×である。
ブースのロンドン調査は全数調査である。ちなみに、ラウントリーのヨーク市調査、日本の国勢調査も全数調査である。
4は×である。
貧困の原因には、労働や環境といった社会経済的原因が圧倒的に多いことを明らかにした。
5は〇である。
正解5
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
選択肢5は、近時の過去問で直接問われていない知識である。消去法で解いた受験生が多かったと思われる。推論しながら解いていけば、3と5までは絞れる。
問題 80 調査における倫理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 調査者と対象者との利害関係についての検討は不要である。
2 調査の目的や対象等に関する倫理審査は、調査終了後に行う必要がある。
3 対象者本人について調べる場合,対象者の認知機能を考慮することは不要である。
4 調査が対象者に及ぼす心理的な影響については。検討する必要がある。
5 想定していた結果と異なるデータは、削除する必要がある。
1は×である。
調査者と対象者に利害関係があると、客観的なデータを得られなくなる可能性がある。
2は×である。
調査開始前に行う必要がある。
3は×である。
対象者の認知機能を考慮しないと適切な調査を行うことは難しい。
4は〇である。
5は×である。
仮説と異なるデータが得られた場合でも,そのデータも含めて報告書をまとめなければならない(㉙問85肢1参照)。
正解4
問題 81 A市こども家庭センターでは、担当圏域の地域住民を対象に、児童虐待の発生予防に向けた活動への協力意向について多肢選択法による質問紙調査を実施することにした。その際、用いる質問文として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「あなたは、児童虐待を防止するための活動や、児童虐待があった家庭を支援するための活動に協力したいと思いますか。あてはまるもの1つを選択してください」
2 「児童虐待を予防するためには地域で協力することが必要不可欠ですが、あなたは、地域での見守り活動に協力したいと思いますか。あてはまるもの1つを選択してください」
3 「あなたは、ネグレクトされている児童の早期発見に向けて、地域でのアセスメント活動に協力したいと思いますか。あてはまるもの1つを選択してください」
4 「あなたは、児童虐待の予防に向けた小学校での取組に協力したいと思いますか。あてはまるもの1つを選択してください」
5 「あなたは、虐待を受けた児童の心理面を支える活動に、地域のニートが協力することについて、どのようにお考えですか。あてはまるもの1つを選択してください」
1は×である。
児童虐待の発生予防に向けた活動だけでなく、「児童虐待があった家庭を支援するための活動」についても協力の意向を聞いていることが不適切である。
2は×である。
児童虐待防止のためには地域での協力が不可欠であるとの部分が不適切である。
3は×である。
児童虐待を「ネグレクトされている児童」に限定していることと、児童虐待の発生予防の活動に向けた活動を「児童虐待があった家庭を支援するための活動」に限定していることが不適切である。
4は〇である。
5は×である。
調査の目的が児童虐待の発生予防に向けた活動への協力意向であるにも関わらず、「虐待を受けた児童の心理面を支える活動」としていることが不適切である。また、「地域のニートが協力すること」についての考えを聞いていることも不適切である。
正解4
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
質問文を作成する際の注意点を、具体的事例に応用できるかが問われている。細かい知識がなくても、その場で素直に考えれば正解を導くことができる。㉟問88、㉝問88参照。
問題 82 事例を読んで,A市地域包括支援センターが実施する調査票の配布・回収の方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
A市地域包括支援センターでは、担当圏域における要支援状態の高齢者50名を対象に、高齢者が感じている困りごとの把握を目的とした標本調査を実施することとした。センター長からの「ご家族の困りごとではなく、高齢者ご自身が感じている困りごとの把握が目的である点に注意すること」という指示を踏まえて、調査票の配布・回収方法を検討することとなった。
1 郵送調査
2 留置調査
3 個別面接調査
4 集合調査
5 インターネット調査
1は×である。
十分な回答が得られない可能性がある。
2は×である。
十分な回答が得られない可能性がある。
3は〇である。
高齢者ご自身が感じている困りごとの把握が目的なので、要支援状態の高齢者に個別に面接して調査を行うのが最も適切だと考えられる。
4は×である。
すべての高齢者が参加できるとは限らない。
5は×である。
インターネットを使用できない人は、調査に回答できないおそれが高い。
正解3
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
対象が「要支援状態の高齢者50名」であること、目的が「高齢者ご自身が感じている困りごとの把握」であることを念頭において、選択肢にある調査方法の適否を吟味する。
問題 83 A介護老人福祉施設では、夜間の睡眠時間を十分に確保できていない利用者Bさんへの対応が課題となっていた。検討の結果、日中の水分摂取量が要因のひとつとして取り上げられ、1か月間データを取って調べることとなった。 Bさんの日中の水分摂取量(ml)と夜間の睡眠時間(分)の関係を見るときに用いる方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 t検定
2 カイ2乗検定
3 散布図
4 箱ひげ図
5 度数分布表
1は×である。
t検定は、2つの標本の平均値を比較する際に、その差が偶然なのか、それとも本当に差があるのか(統計的に有意な差と言えるか)を統計学的に判定する手法である。
2は×である。
「カイ2乗検定」は、クロス集計に示した2変数間の関連性を検定する方法の一つである。クロス集計は、主に2つ以上の質的変数(名義尺度・順序尺度)に対する回答の傾向から両者の関係性を把握するための方法であり、水分摂取量や夜間の睡眠時間のような量的変数の関係性を見るのに適した方法とはいえない。
3は〇である。
散布図は、2つの変数の関係性を視覚的に表現するグラフである。データ間の相関関係や傾向を把握することができる。日中の水分摂取量(ml)と夜間の睡眠時間(分)の関係を調べるのに、散布図を用いることは適切である。
4は×である。
箱ひげ図は、最大値・最小値・四分位数の情報を表現したグラフである(平均値が含まれる場合もある)。例えば、A市とB市の世帯の分布を比較するような場合に用いられる。
5は×である。
データをある範囲ごとに区切って、その範囲に属する数の散らばりの様子を度数分布といい、それを表にしたものを度数分布表という。別の言い方をすれば、データを特定の範囲に分類し、それぞれの範囲にいくつのデータが該当するかまとめたものである。度数分布表は、データの全体像をつかむために有効であるが、本問のような2つの変数の関係を見る場合に適したものとはいえない。
正解3
問題 84 面接調査において調査者が行ったことに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 構造化面接において、調査の質問項目に設定していない内容についても自由に回答するよう対象者に求めた。
2 半構造化面接において、インタビューガイドに設定した質問の順番に従って回答するよう対象者に求めた。
3 非構造化面接において、調査開始前に対象者がテーマを設定するよう依頼した。
4 フォーカスグループインタビューにおいて、司会者として最初に基本的なルールを説明した。
5 面接後の逐語録作成において、録音データを聞き取れない部分は会話の流れから想像して記述した。
1は×である。
構造化面接では予め質問事項が決まっているので、調査の質問項目に設定していない内容について自由に回答するよう求めることは不適切である。
2は×である。
半構造化面接は、質問項目は決めているが、ある程度の自由度を持って進める面接方法であることから、本肢は不適切である。
3は×である。
非構造化面接は、シナリオや質問項目などは準備せずに、調査対象者に自由に語ってもらう方法なので、調査開始前に対象者がテーマを設定するよう依頼することは適切ではない。
4は〇である。
5は×である。
録音データを聞き取れない部分について、会話の流れから想像して記述するのでは逐語録にならない。
正解4
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
㊱問89、㉞問90参照。

