問題 63 「生活保護の被保護者調査(平成30年度確定値)」(厚生労働省)に示された,2018 年度(平成30年度)における生活保護受給者の動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保護実人員(保護停止中を含む)は1995年度(平成7年度)の時点よりも増加している。
2 保護率(人口百人当)は,16.6%である。
3 保護開始の主な理由は,「傷病による」の割合が最も多い。
4 保護廃止の主な理由は,「働きによる収入の増加・取得・働き手の転入」の割合が最も多い。
5 保護の種類別にみた扶助人員は,住宅扶助よりも教育扶助の方が多い。
試験場では肢3を選んだ人が多かったのではないだろうか。
基礎知識と応用力の差が顕著に反映される問題である。
1は、知らないと判断に迷う。1995年といえばバブル崩壊後の景気の低迷期である。他方、2018年はリーマンショックの影響による不況下から数年が経過した後である。△にして次に進む。
2は、×である。保護率が10%に達したという話など聞いたことがない(※それくらい現在の保護率は低い)。
3は、×である。割合が最も多いのは「貯金等の減少・喪失」である。ちなみに、「傷病による」は、2番目に多い割合となっている。事実を知らなければ、△にして次に進む。
4は、×である。事実を知らなければ、保護廃止の理由として「働きによる収入の増加・取得・働き手の転入」よりも多いものとして何かないかを考えてみる。保護を受けているのが高齢世帯に多いことは知っている人が多いであろう。その場合の廃止の理由は「働きによる収入の増加・取得・働き手の転入」よりも
「死亡」の方が多いと想像できる。
5は、×である。住まいは生活の不可欠の要素である。他方、教育扶助を受けるのは義務教育の就学中の者である。そうだとすると
住宅扶助>教育扶助ということは容易に考えつく。
【正解1】
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼
保護開始の主な理由
1位:「貯金等の減少・喪失」38.8%
2位:「傷病による」23.4%
3位:「働きによる収入の減少・喪失」 19.3%
保護終了の主な理由
1位:「死亡」38.0%
2位:「働きによる収入の増加・取得・働き手の転入」 18.5%
3位:「失そう」7.2%
※但し、その他を除く
問題 64 生活保護法が規定する基本原理・原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。
2 必要即応の原則とは,要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において保護を行うことをいう。
3 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われる。
4 保護の決定は,生活困窮に陥った原因に基づいて定められている。
5 行政庁が保護の必要な者に対して,職権で保護を行うのが原則とされている。
基本原理・原則に関する問題は、過去問で何度も問われている。絶対に落としてはいけない。
選択肢の中にはその原理・原則に関連するものの内容がおかしなものが含まれている。そうした選択肢を読んで軽率に答えを選んだり、混乱したりしないように注意する。
1は、×である。無差別平等の原理に関する記載である。正しくは、
この法律の定める
要件を満たす限り・・・である。
2は、×である。記載内容は
基準及び程度の原則についての記述である。
3は、〇である。
保護の補足性の原理に関する記述である。
4は、×である。このような内容の原理・原則はない。強いていえば無差別平等の原理と関連するが、
生活困窮に陥った原因は問われない。
(現行生活保護法では、欠格条項撤廃されている)
5は×である。生活保護は、
申請保護の原則が採用されている。急迫の事態にあると認められた場合に、職権保護が可能である。
【正解3】
問題 65 事例を読んで,R市福祉事務所のK生活保護現業員が保護中請時に行う説明に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Lさん(39歳,男性)は,妻(36歳),長男(15歳,中学生)及び次男(4歳,幼稚園児)と暮 らしている。Lさんは精神障害者,妻は身体障害者であり,一家は夫妻の障害基礎年金とLさんの就労所得で生活してきた。これまでLさんはパートタイム就労を継続していたが,精神疾患が悪化して退職し,夫妻の年金だけでは生活できなくなった。Lさんは,退職に際して雇用保険からの給付もなかったので,生活保護の申請を行おうとしている。
1 生業扶助における母子加算を受給できることを説明した。
2 二人の子に対しては,それぞれ教育扶助を受給できることを説明した。
3 長男が高校に進学すれば,教育扶助から高等学校等就学費を受給できることを説明した。
4 夫妻が共に障害基礎年金を受給していても,生活保護の申請を行うことはできると説明した。
5 Lさんに精神疾患があるとしても,就労が可能である場合,生活保護の申請は行えないことを説明した。
選択肢の中にはやや細かい知識を問うものもあるが、迷うものがあったとしても積極法で正解を選ぶことができたのではないだろうか。
1は、×である。母子加算は
18歳以下の子を養育する
単親家庭に保護費を上乗せする制度である。
2は、×である。教育扶助は
義務教育に必要な就学のための費用を支給するものであるが、次男は幼稚園児である。
3は、×である。高等学校等就学費は就業扶助から支給される。
4は、〇である。障害基礎年金だけでは生活できない状況であれば、生活保護の申請を行うのは当然である。K生活保護現業員が保護中請時に行う説明として適切である。
5は、×である。就労が可能であっても、生活保護の申請は可能である。
【正解4】
問題66 生活保護法に定める不服申立てに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 不服申立てが権利として認められたのは,旧生活保護法(1946年(昭和21年))制定時においてである。
2 審査請求は,市町村長に対して行う。
3 審査請求に対する裁決が50日以内に行われないときは,請求は認容されたものとみなされる。
4 当該処分についての審査請求を行わなくても,処分の取消しを求める訴訟を提起することができる。
5 再審査請求は,厚生労働大臣に対して行う。
本問で問われていることは、 過去、権利擁護と成年後見制度の科目でも出題されている事項である。
確実に得点したい問題である。
1は、×である。不服申立てが権利として認められたのは、新生活保護法(1950年(昭和25年))制定時である。
2は、×である。審査請求は都道府県知事に対して行う。
3は、×である。この場合、請求は
棄却されたものとみなされる。
4は、×である。生活保護法は
審査請求前置主義を採用している。
5は、〇である。肢2の審査請求の話とまとめて理解・記憶しておこう。
【正解5】
問題67 事例を読んで,S市福祉事務所のM生活保護現業員の支援に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Aさん(30歳,女性)は,会社員として働いていた3年前に乳がんと診断された。仕事をしながら治療を受けることが困難であったため会社を退職し,現在,生活保護を受給し,S市福祉事務所のM生活保護現業員による支援を受けている。約1年間の治療を経て,現在はパートタイムの仕事ができる程度に体調が回復しており,検診の結果,「軽労働」が可能と診断された。そこでAさんは,体調に合わせて働ける職場での再就職を希望している。
1 日常生活自立を図るため,Aさんに被保護者就労準備支援事業の利用を促す。
2 Aさんの同意を得て,公共職業安定所(ハローワーク)と福祉事務所が連携した就労支援チームによる支援を行う。
3 Aさんの同意を得て,公共職業安定所(ハローワーク)に配置される就職支援コーディネーターに職業相談・職業紹介を依頼する。
4 Aさんの同意を得て,福祉事務所に配置される就職支援ナビゲーターに公共職業安定所(ハローワーク)と連携した支援を依頼する。
5 Aさんの同意を得て,S市において生活困窮者自立相談支援事業を受託している社会福祉協議会に,被保護者就労支援を依頼する。
今後、新カリキュラムの導入に伴い、本問のような形で生活保護その他の関連科目で出題されると推測される。
このような問題は就労支援サービスで出題されるのがより相応しいようにも感じるが、新しいカリキュラムでは就労支援サービスは独立した科目ではなくなる。
1は、×である。被保護者就労準備支援事業がどのようなものかがわからないと判断できないかもしれない。Aのように勤労意欲がある者には適しない。
2は、内容そのものに大きな問題はなく、〇ぽい。このような連携がなされていることを知らないと少し不安を覚えるかもしれないが、こうした連携そのものが許されないとはいえないであろう。
3は、×である。公共職業安定所(ハローワーク)に配置されるのは
就労支援コーディネーターである。
4は、×である。
就職支援ナビゲーターは、公共職業安定所(ハローワーク)に配置される。
5は、悩んだ人も多いのではないか。このような支援も一つの方法であろう。ただ、現在支援を行っているM生活保護現業員が行う支援としては、肢2のほうがより適切だといえる。
【正解2】
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼
被保護者就労準備支援事業
就労意欲が低い者や基本的な生活習慣に課題を有する者等の支援を充実させるために創設されたものである。
就労支援コーディネーター
対象者との面接等により、生活環境等を把握し、様々な事情を勘案し、本人にとってより適切な就職支援メニューを選定・振り分け・対象者の誘導を行う。
就職支援ナビゲーター
ハローワークに所属する非常勤の国家公務員。
職業相談・職業紹介、履歴書・職務経歴書の個別添削等の就職支援や求職者のニーズに応じた求人開拓などを行う。
問題68 福祉事務所の組織及び運営に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県及び市(特別区を含む)は,条例で,福祉事務所を設置しなければならない。
2 都道府県知事は,生活保護法に定める職権の一部を,社会福祉主事に委任することができる。
3 生活保護の現業を行う所員(現業員)は,保護を決定し実施することができる。
4 福祉事務所の指導監督を行う所員(査察指導員)及び現業を行う所員(現業員)は,生活保護法以外の業務に従事することは禁止されている。
5 福祉事務所の長は,高度な判断が求められるため社会福祉士でなければならない。
単独で問われると判断に迷う肢があるかもしれないが、積極法で正解して欲しい問題である。
肢1だけは迷ってはいけない。
1は、〇である。基本中の基本ともいえる知識である
(㉗問69参照)。
2は、×である。普通に考えて、生活保護法に定める職権の一部を社会福祉主事に委任できるはずがないと感じて欲しい。
3は、×である。保護の実施機関は、都道府県知事、市長及び福祉事務所を管理する町村長である。保護の実施機関は、保護の決定・実施の事務について福祉事務所長に委任をし、福祉事務所長が行政庁として保護の決定・実施の事務を行う。細かく知らなくても「所員(現業員)」でないことが判断できればよい。
4は、×である。生活保護法以外の業務に従事することも可能である。現実には選挙の際の業務に従事することがある。
5は、×である。このような規定はない。
【正解1】
問題69 生活福祉資金貸付制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 借入れの申込先は,福祉事務所である。
2 借入れの申込みは,民生委員を介して行わなければならない。
3 資金貸付けと併せて必要な相談支援を受ける。
4 償還の猶予はできない。
5 総合支援資金は,連帯保証人を立てないと貸付けを受けることができない。
社会福祉士であれば、知っておかなければならない知識の一つだといえる。過去問にも出題実績がある。
この解説を書いているのは2021年2月27日であり、ちょうど新型コロナが日本でも話題になってから1年が経過した頃である。生活福祉資金貸付制度で、急場を凌いだ人もかなりいたと思われる。
1は、×である。借入れの申込先は、社会福祉協議会である。
2は、×である。民生委員は生活福祉資金貸付制度と密接に関わっているが、借り入れの申し込みについて民生委員を介しなければならないとの規定はない。
3は、〇である。仮に知らなかったとしても、本肢の内容そのものを積極的に間違いとする理由はないであろう。
4は、×である。生活福祉資金貸付制度という名称からしても、償還の猶予は認められそうだと推察できる。
5は、知らないと判断に迷うかもしれない。ただ、総合支援資金が「生活福祉資金貸付制度に関する」ものである以上、「連帯保証人を立てないと貸付けを受けることができない」との部分を×ではないかと推測することは可能であろう。
【正解3】