8.社会的養護(R元年-後期)2/2

問6 次の文のうち、家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)の業務に関する記述として不適切な記述を一つ選びなさい。
1 対象児童の早期家庭復帰のための保護者等に対する相談援助
2 対象児童等に対する心理療法
3 退所後の児童に対する継続的な相談援助
4 里親委託・養子縁組の推進
5 児童相談所等関係機関との連絡・調整
 
この問題は、何となく分かったのではないでしょうか。
家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)の業務に心理療法はありません。

【正解2】

問7 次の文のうち、「児童養護施設運営指針」(平成 24 年3月 厚生労働省)において示されている「発達の保障と自立支援」に関する記述として適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 子どもは、愛着関係や基本的な信頼関係を基盤にして、自分や他者の存在を受け入れていくことができるようになる。
B 子どもの自立に向けた生きる力の獲得は、集団生活における協調性が基盤となり可能となる。
C 社会的養護では、子どもの自立や自己実現を目指して、子どもの活動の制限と他者との調和を大切にする。
D 子どもは、様々な生活体験を通して、自立した社会生活に必要な基礎的な力を形成していく。
(組み合わせ)
1 A B
2 A C
3 A D
4 B C
5 B D
 
児童養護施設運営指針は頻出問題。
以下、該当箇所引用。

②発達の保障と自立支援
・子ども期のすべては、その年齢に応じた発達の課題を持ち、その後の成人期の人生に向けた準備の期間でもある。社会的養護は、未来の人生を作り出す基礎となるよう、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指して行われる。
・特に、人生の基礎となる乳幼児期では、愛着関係や基本的な信頼関係の形成が重要である。子どもは、愛着関係や基本的な信頼関係を基盤にして、自分や他者の存在を受け入れていくことができるようになる。自立に向けた生きる力の獲得も、健やかな身体的、精神的及び社会的発達も、こうした基盤があって可能となる。
・子どもの自立や自己実現を目指して、子どもの主体的な活動を大切にするとともに、様々な生活体験などを通して、自立した社会生活に必要な基礎的な力を形成していくことが必要である。
Bは協調性が基盤となりというのが引っ掛かります。協調性は大切ですが、生きる力の獲得の基盤となるというのは言い過ぎでしょう。
Cは子どもの活動の制限という表現が完全にアウトです。

【正解3】

問8 次の文のうち、「児童養護施設運営指針」(平成 24 年3月 厚生労働省)において示されている「社会的養護の原理」に関する記述として最も適切な記述を一つ選びなさい。
1 社会的養護は、できる限り特定の養育者による一貫性のある養育が望まれる。
2 社会的養護における養育は、つらい体験をした過去を現在、そして将来の人生と切り離すことを目指して行われる。
3 社会的養護における養育は、効果的な専門職の配置ができるよう、大規模な施設において行う必要がある。
4 社会的養護における支援は、子どもと緊密な関係を結ぶ必要があるので、他機関の専門職との連携は行わない。
5 社会的養護は、措置または委託解除までにすべての支援を終結し、自立させる必要がある。
 
児童養護施設運営指針の他の箇所からの出題です。
内容をすべて記憶していないことを前提に解いてみましょう。
1:正しい。
2:切り離すというのが✕
3:大規模な施設というのが時代に逆行で✕
4:連携を行わないが✕
5:すべての支援の終結が✕
以下、該当箇所引用。

(2)社会的養護の原理
社会的養護は、これを必要とする子どもと家庭を支援して、子どもを健やかに育成するため、上記の基本理念の下、次のような考え方で支援を行う。
①家庭的養護と個別化
・すべての子どもは、適切な養育環境で、安心して自分をゆだねられる養育者によって、一人一人の個別的な状況が十分に考慮されながら、養育されるべきである。
・一人一人の子どもが愛され大切にされていると感じることができ、子どもの育ちが守られ、将来に希望が持てる生活の保障が必要である。
・社会的養護を必要とする子どもたちに「あたりまえの生活」を保障していくことが重要であり、社会的養護を地域から切り離して行ったり、子どもの生活の場を大規模な施設養護としてしまうのではなく、できるだけ家庭あるいは家庭的な環境で養育する「家庭的養護」と、個々の子どもの育みを丁寧にきめ細かく進めていく「個別化」が必要である。
②発達の保障と自立支援
・子ども期のすべては、その年齢に応じた発達の課題を持ち、その後の成人期の人生に向けた準備の期間でもある。社会的養護は、未来の人生を作り出す基礎となるよう、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指して行われる。
・特に、人生の基礎となる乳幼児期では、愛着関係や基本的な信頼関係の形成が重要である。子どもは、愛着関係や基本的な信頼関係を基盤にして、自分や他者の存在を受け入れていくことができるようになる。自立に向けた生きる力の獲得も、健やかな身体的、精神的及び社会的発達も、こうした基盤があって可能となる。
・子どもの自立や自己実現を目指して、子どもの主体的な活動を大切にするとともに、様々な生活体験などを通して、自立した社会生活に必要な基礎的な力を形成していくことが必要である。
③回復をめざした支援
・社会的養護を必要とする子どもには、その子どもに応じた成長や発達を支える支援だけでなく、虐待体験や分離体験などによる悪影響からの癒しや回復をめざした専門的ケアや心理的ケアなどの治療的な支援も必要となる。
・また、近年増加している被虐待児童や不適切な養育環境で過ごしてきた子どもたちは、虐待体験だけでなく、家族や親族、友達、近所の住人、保育士や教師など地域で慣れ親しんだ人々との分離なども経験しており、心の傷や深刻な生きづらさを抱えている。さらに、情緒や行動、自己認知・対人認知などでも深刻なダメージを受けていることも少なくない。
・こうした子どもたちが、安心感を持てる場所で、大切にされる体験を積み重ね、信頼関係や自己肯定感(自尊心)を取り戻していけるようにしていくことが必要である。
④家族との連携・協働
・保護者の不在、養育困難、さらには不適切な養育や虐待など、「安心して自分をゆだねられる保護者」がいない子どもたちがいる。また子どもを適切に養育することができず、悩みを抱えている親がいる。さらに配偶者等による暴力(DV)などによって「適切な養育環境」を保てず、困難な状況におかれている親子がいる。
・社会的養護は、こうした子どもや親の問題状況の解決や緩和をめざして、それに的確に対応するため、親と共に、親を支えながら、あるいは親に代わって、子どもの発達や養育を保障していく包括的な取り組みである。
⑤継続的支援と連携アプローチ
・社会的養護は、その始まりからアフターケアまでの継続した支援と、できる限り特定の養育者による一貫性のある養育が望まれる。
児童相談所等の行政機関、各種の施設、里親等の様々な社会的養護の担い手が、それぞれの専門性を発揮しながら、巧みに連携し合って、一人一人の子どもの社会的自立や親子の支援を目指していく社会的養護の連携アプローチが求められる。
・社会的養護の担い手は、同時に複数で連携して支援に取り組んだり、支援を引き継いだり、あるいは元の支援主体が後々までかかわりを持つなど、それぞれの機能を有効に補い合い、重層的な連携を強化することによって、支援の一貫性・継続性・連続性というトータルなプロセスを確保していくことが求められる。
・社会的養護における養育は、「人とのかかわりをもとにした営み」である。子どもが歩んできた過去と現在、そして将来をより良くつなぐために、一人一人の子どもに用意される社会的養護の過程は、「つながりのある道すじ」として子ども自身にも理解されるようなものであることが必要である。
⑥ライフサイクルを見通した支援
・社会的養護の下で育った子どもたちが社会に出てからの暮らしを見通した支援を行うとともに、入所や委託を終えた後も長くかかわりを持ち続け、帰属意識を持つことができる存在になっていくことが重要である。
・社会的養護には、育てられる側であった子どもが親となり、今度は子どもを育てる側になっていくという世代を繋いで繰り返されていく子育てのサイクルへの支援が求められる。
・虐待や貧困の世代間連鎖を断ち切っていけるような支援が求められている。

【正解1】

問9 次の文のうち、児童養護施設における第三者評価および自己評価に関する記述として適切なものを一つ選びなさい。
1 第三者評価の受審が義務づけられている。
2 第三者評価は、4か年度毎に1回以上受審しなければならない。
3 自己評価の結果の公表は任意である。
4 自己評価は、2か年度毎に1回行わなければならない。
5 第三者評価における利用者調査の実施は任意である。  
第三者評価、自己評価もよく出る問題です。
以下、該当箇所引用。

①施設運営や養育・支援の内容について、自己評価、第三者評価等、定期的に評価
を行う体制を整備し、機能させる。
3年に1回以上第三者評価を受けるとともに、定められた評価基準に基づいて、毎年自己評価を実施する。
・職員の参画による評価結果の分析・検討する場を設け、実行する。
②評価の結果を分析し、施設として取り組むべき課題を明確にし、改善策や改善実
施計画を立て実施する。
・分析・検討した結果やそれに基づく課題を文書化し、職員間で共有し、改善に取
り組む。
第三者評価は3年に1回のサイクル。自己評価は毎年です。これは他の施設でも同様です。
第三者評価の義務化は、平成24年度からで、対象施設は児童養護施設・乳児院・母子生活支援施設・情緒障害児短期治療施設(現在の児童心理治療施設)・児童自立支援施設です。

【正解1】

問 10 次の【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】
児童養護施設に勤めるXさん(保育士)は、Y君(6歳)を担当している。Y君は、年下のZ君(3歳)が楽しそうに積み木を組み立てていると、それをわざと壊したりする。こういった場面が最近とても頻繁にみられるので、Xさんは、Y君を注意することが多くなっている。そこでXさんは主任保育士に相談をした。すると、主任保育士からは、Y君の得意なことを活かした支援をするようにと指導を受けた。
【設問】
主任保育士からの指導の内容を表す最も適切な語句を一つ選びなさい。
1 スティグマ
2 パーマネンシー
3 社会的包摂
4 多様性
5 ストレングス
 
本人の力を引出す支援です。
1:スティグマとは、元々牛や奴隷に焼きつけられた刻印のこと。現在の福祉業界では、汚名、汚点、屈辱などのニュアンス。
2:パーマネンシーは、恒久的な家庭環境。
3:社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)の反対語は社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)です。
4:多様性は、最近ダイバーシティという片仮名で表されることが多い。
5:ストレングスとは、本人の長所や強みにアプローチして、できることを大切にする支援。

【正解5】