6.地域福祉の理論と方法(R2年-第33回)1/2

問題32 事例を読んで, U障害者支援施設のA相談員(社会福祉士)が立てた,利用者の地域移行に向けたプランに関する次の記述のうち,地域福祉の理念・原則に基づき,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
重度の知的障害があるBさん(40歳,女性)は,特別支援学校高等部を卒業後,実家から遠く離れたU障害者支援施設に入所して生活を続けてきた。Bさんは言葉でのコミユニケーションは困難であるが,地域で近隣の住民がボランティアとして主催する音楽活動に時折参加した際には,明るい表情で音楽を聴く様子が見られた。 Bさんには兄弟姉妹がなく,両親は既に亡くなっている。

 
1 自己決定の尊重の観点から,Bさん自身から地域移行の希望が出てくるのを待つプランを立てた。
2 社会的包摂の観点から,BさんがU障害者支援施設近くの共同生活援助(グループホーム)に移り,地域住民と共に音楽を楽しむ場に参加するプランを立てた。
3 自立生活支援の観点から,Bさんが一般就労をした後に地域移行を目指すプランを立てた。
4 ノーマライゼーションの観点から,Bさんの実家近くの障害者支援施設へ入所するプランを立てた。
5 住民主体の観点から,地域移行後のBさんの支援を全面的に住民ボランティアに委ねるプランを立てた。
 
「最も適切なものを選べ」という聞き方では、選択肢の内容そのものに誤りがないものが複数存在する可能性があるので、より慎重に解く必要がある。
冷静に読めば正解を選ぶのはさほど困難ではないであろう。早めに肢を絞って、そこから比較検討して選ぶ必要がある。
 
1は、×である。Bさんは重度の知的障害があり、言葉でのコミユニケーションも困難であることからすると、「Bさん自身から地域移行の希望が出てくるのを待つプラン」はあまりに消極的な支援といえる。
2は、ざっと読む限りよさそうであり、〇ぽい。
3は、×である。「一般就労をした後に地域移行を目指すプラン」は、Bさんの状態から一般就労が難しいと考えられることから、適切とは言い難い。むしろ地域福祉の理念・原則からすると地域移行を優先すべきと考えられる。
4は、一読するとよさそうにもみえる。しかし、ノーマライゼーションの観点からすれば、「障害者支援施設へ入所するプラン」とするのがひっかかる。むしろ、肢2の共同生活援助(グループホーム)に入所するほうがノーマライゼーションの観点には合致している。△にしておく。
5であるが、住民主体が地域福祉の理念・原則であるとしても、重度の知的障害があるBさんの支援を「全面的に住民ボランティアに委ねるプラン」は適切とはいえまい。×である。

【正解2】

 
問題33 民生委員制度やその前身である方面委員制度等に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 方面委員制度は,岡山県知事である笠井信一によって,地域ごとに委員を設置する制度として1918年(大正7年)に創設された。
2 方面委員は,救護法の実施促進運動において中心的な役割を果たし,同法は1932年(昭和7年)に施行された。
3 民生委員法は,各都道府県等で実施されていた制度の統一的な発展を図るため,1936年(昭和11年)に制定された。
4 民生委員は,旧生活保護法で補助機関とされていたが,1950年(昭和25年)に制定された生活保護法では実施機関とされた。
5 全国の民生委員は,社会福祉協議会と協力して,「居宅ねたきり老人実態調査」を全国規模で1968年(昭和43年)に実施した。
 
細かそうに見えるが、年号以外で判断できるものも多い。解き方としてはわかりやすいものから確実に判断していくことであろう。
本問の場合、正しいものを見つけるよりも、消去法で誤りの肢を判断することの方が容易である。
 
1は、×である。方面委員制度は大阪府知事の林市蔵である。
2は、〇である。知らないと悩む。救護法が制定されたのは1929(昭和4年)だが、様々な事情で1932年(昭和7年)に施行された。
3は、明らかに×である。民生委員法ができたのは第二次大戦のことである。1945年(昭和20年)8月15日が終戦記念日である。
4が、×であることはわかりやすい。1950年(昭和25年)に制定された生活保護法で実施機関とされたということはない。むしろ新生活保護法によりその役割は大きく縮小された。
5は、知らないと自信を持って判断できないが、消去法により正しいと判断する。事実、〇である。

【正解2,5】

 
問題34 地域福祉の在り方に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会保障審議会の「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在 り方について」(2002年(平成14年))は,専門のコンサルタントに計画の策定を請け負わせるべきであると提言した。
2 厚生労働省の「これからの地域福祉のあり方に関する研究会報告書」(2008年(平成20年))は,制度の対象とならない生活課題は,行政が原則として関与せず,住民同士の支え合いによって解決していく必要があると提言した。
3 社会保障審議会の「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会報告書」(2013年 (平成25年))は,生活保護受給者が増加する中で,中間的就労を通じた生活困窮者の社会参加よりも一般就労を重視すべきであると提言した。
4 厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017年(平成29年))は,地域共生社会の実現に向けて,地域住民が多機関協働の中核を担う必要があると提言した。
5 厚生労働省の「地域共生社会推進検討会最終とりまとめ」( 2019年(令和元年))は,既存 の地域資源と狭間のニーズを持つ者との間を取り持つ,新たな参加支援の機能が重要であると提言した。
 
この科目が得意な人なら積極法で正解を選べるであろう。
苦手な人でも消去法で正解を導けた人が多かったと思われる。
 
1は、×である。「専門のコンサルタントに計画の策定を請け負わせる」ことは地方公共団体が、自らの役割を下請けに出すことを認めるようなものである。
2は、×である。「制度の対象とならない生活課題」であっても「行政」が関わっていくことこそ「これからの地域福祉のあり方」といえるのではないだろうか。
3は、×ぽい。「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」がわざわざ「一般就労を重視すべきである」と言うはずがないからである。
4は、×ぽい。「多機関協働の中核を担う」役割は住民には、荷が重過ぎると感じられるからである。
5は、特に問題のない記述である。知らなかったとしても2019年の「地域共生社会推進検討会最終とりまとめ」であれば、記述のような問題意識が反映されていてもおかしくない。

【正解5】

 
問題35 事例を読んで.N市の地域包括支援センターのC社会福祉士の対応として, 最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
N市の地域包括支援センターのC社会福祉士は,担当地区で住民主体の集いの場を行っているグループから,様々な高齢者が集まってくれて手応えを感じているが,福祉の専門的な相談に対応できずに悩んでいる,と相談を受けた。C社会福祉士は,この相談を住民活動と協働して,アウトリーチによる早期のニーズ把握を行う好機と捉え,対応することにした。

1 集いの場を通じて高齢者の早期のニーズを正確に把握するため,地域包括支援センターが主体となった運営に切り替えることを提案する。
2 集いの場において受付や後片付けなどを手伝い,集いの場により多くの参加者を受け入れられるよう支援する。
3 専門的な相談機関のリストを作成し,相談が必要な人に渡すよう,集いの場に参加している高齢者に依頼する。
4 集いの場に地域包括支援センターの保健師を派遣し,適切な介護予防のプログラムが実施できるよう指導させる。
5 集いの場において出張相談を実施し,気になることがあればいつでも相談してほしいと参加者に伝える。
 
「最も適切なもの」とあるので、違和感のある肢から消去法で消していく。
 
1は、×である。住民主体の原則に反する対応だからである。
2のような活動は、住民との距離を縮めるものとして悪くはないであろう。しかし、他により適切なものがあるかもしれないので、△にして次に進む。
3は、×ぽい。集いの場に参加している人が、相談が必要な人を判別することが可能なのかという疑問が湧く。
4は×ぽい。現実にありそうな話だが、このような対応は〔事例〕にある「アウトリーチによる早期のニーズ把握を行う好機」を活かすものとはいえない。
5は、まさに社会福祉士が「住民活動と協働して,アウトリーチによる早期のニーズ把握を行う」ための対応といえよう。

【正解5】

 
問題36 社会福祉法における地域福祉の推進に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会福祉事業を経営する者は,地域福祉を推進する主体には含まれないとされている。
2 社会福祉に関する活動を行う者は,地域福祉を推進する主体である市町村に協力しなければならないとされている。
3 地域住民等は,支援関係機関と連携して地域生活課題の解決を図るよう留意するとされている。
4 福祉サービスの利用者は,支援を受ける立場であることから,地域福祉を推進する主体には含まれないとされている。
5 国及び地方公共団体は,地域住民等が取り組む地域生活課題の解決のための活動に関与しなければならないとされている。
 
本問は肢2と肢3で迷った受験生が多かったと思われる。肢2は関連する条文が社会福祉法4条1項に、3は同条2項に該当する条文がある。
社会福祉法が作られた背景(社会福祉事業法が全面改正されたものである)、地域福祉の理念から考えて、問題を解くのがポイントと考える。
 
1は、×である。地域福祉を推進する主体には、社会福祉事業を経営する者も含まれる。
2は、△にして先に進む。明らかにおかしいと即答できないが、「地域福祉を推進する主体である市町村」と「協力しなければならない」という部分がひっかかる。
3どうか。地域福祉の主体は地域住民であるが、地域生活課題の解決を図るよう「留意する」との部分が少しひっかかる。△にして次に進む。
4は、×である。利用者を「地域福祉を推進する主体」から除く理由はない。利用者も住民であることからしても理解できる。
5は、一見よさそうだが、「地域住民等が取り組む地域生活課題の解決のための活動」に「国及び地方公共団体」が関与することを義務付けることは、住民の自主性を害すると考えるほうがよい。

【正解3】