29.精神保健福祉に関する制度とサービス(R2年-第23回)2/2

問題67 更生保護制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 矯正施設での施設内処遇が原則となる。
2 仮釈放の決定を行うのは、地方裁判所である。
3 保護観察の期間は、保護観察所が決定する。
4 仮釈放者は、自立更生促進センターに入所することができる。
5 地域生活定着支援センターは、保護観察所に併設される。
 
更生保護の関連知識を問う問題は、毎年のように出題されている。
今後もこの傾向は続く。(むしろ増えるかもしれない。)
 
1は、×である。更生保護は、社会内処遇である。様々な働きかけをすることにより、再び社会の順良な一員として更生させるものである。
2は、×である。仮釈放は、矯正施設の長からの申請に基づき、地方更生保護委員会が、総合的に判断して決める。
3は知らないと迷うであろうが、×である。保護観察の期間は、保護観察所が決定するものではない。
4は、〇である。仮釈放者がすぐに社会復帰することが難しいと思われる場合、自立更生促進センターに入所できる。
5は、×である。地域生活定着支援センターは、高齢又は障害を有するため、福祉的な支援を必要とする矯正施設退所者について、退所後直ちに福祉サービス等につなげるために設置されている支援機関である。

【正解4】

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<仮釈放の判断指標>
対象者に、①悔悛の情、②更生の意欲、③再犯のおそれがないこと、④社会の感情が釈放を是認するか、の4つが認められるかが、総合的に判断される。

 

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地域生活定着支援センター
2009年(平成21年)7月より全国で設置が進んでいる。
現在、各都道府県に1か所ずつ(北海道は2か所)設置されており、各都道府県から事業主体が受託して運営されている。事業の受託主体はNPO法人、社会福祉協議会、社会福祉士会など様々である。

 

問題68 退院後生活環境相談員に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 担当できる医療保護入院者の人数の目安は概ね50人以下である。
2 措置入院者の退院促進も対象となる。
3 精神療養病棟に必置としている。
4 「精神保健福祉法」第27条第3項に基づく精神保健指定医の診察に立ち会う。
5 精神保健福祉士として3年以上の相談・指導経験を必要とする。
 
本問は、一定の知識がないと解くのが難しい部類の問題だと思う。
 
1は、知らないと悩む記述である。これが〇だが、判断できなければ△にして次に進む。
2は、×である。退院後生活環境相談員は、医療保護入院者の退院に向けた相談支援や地域援助事業者等の紹介、円滑な地域生活への移行のための退院後の居住の場の確保等の調整等の業務を行う。
3は、×である。精神療養病棟は、急性期を過ぎ、安定した状態にある患者が生活のリズムを作るための場所として考えられた病棟である。退院後生活環境相談員は、患者が入院してから7日以内に選任される。
4は、×である。普通に考えて特定の診察の場面で、退院後生活環境相談員の立ち合いが求められているとは考えにくい。
5は、×である。精神保健福祉士であればよく、3年以上の相談・指導経験は任用要件とはなっていない。

【正解1】

問題69  Q市では、精神障害者の就労への意面の実態と関連要因を把握するため、市内就労移行支援事業所の全利用者を対象に郵送によるアンケートを行った。調査票は主に尺度で構成された。さらに、同意が得られた者には調査員が自宅に訪問し、就労に対する気持ちの変化を聴き取る面接調査を行った。アンケートの分析から、当事者同士の交流頻度と就労への意欲との間に正の相関関係があることが分かった。また面接の語りの分析からは、仲間の就労体験を聞くことで自分自身も就労したいという意欲につながる過程が示された。
次のうち、この調査で用いられた社会調査の手法として、正しいものを1つ選びなさい。

1 層化抽出法
2 ミックス法
3 参与観察法
4 コホート調査法
5 パネル調査法
 
本問の場合、市内就労移行支援事業所の全利用者を対象に郵送によるアンケートを行っているので、層化抽出法は用いられていない。
また、面接による調査も同意を得た者を対象に行っているので、ここでも層化抽出法は用いられていない。
 
1は、わからなければ△にして次に進む。
2も、ぴんとこなければ△にして次に進む。
3は、×である。調査の過程において参与観察を用いたことをうかがわせる事情はない。
4は、×である。調査の過程で同年代のものを対象にしたことをうかがわせる事情はない。5は、×である。調査の過程でパネル調査を用いたことを伺わせる事情はない。

【正解2】

ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
肢1と肢2についてあまりなじみがない場合は、問題を再度読んでヒントがないかを探す。問題文をよく読むと、郵送によるアンケート調査と訪問による面接調査を行っていることがわかる。それら2つのタイプの方法を用いていることがミックス法だと推測して解答するのが無難である。

 

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層化抽出法とは、母集団をその特性に応じていくつかの層に分類することが可能な場合に、母集団を層化し、各層からランダムに標本を抽出する方法である。

 

(精神保健福祉に関する制度とサービス•事例問題)
次の事例を読んで、問題70から問題72までについて答えなさい。
〔事例〕

Bさん(50歳、男性)は30代の頃に統合失調症を発症し、両親が自宅で面倒を見ていた。しかし、その両親が交通事故で亡くなると、病状が極めて不安定になり、最終的X病院 に2010年(平成22年)に入院した。入院後1年で病状は落ち着いたものの、退院が迫ると病状が悪化するなど、不安定な状態になることを10年ほど繰り返していた。
地域の相談支援事業所のC精神保健福祉士は、X病院からBさんについて紹介を受け、Bさんに話を聞いた。Bさんは、「退院はともかく、外の世界が今どうなっているかは知りたい。あと病院の外で食事をしてみたい」とぽつぽつと話した。Bさんは、「障害者総合支援法」における地域相談支援に基づくサービスを利用し、C精神保健福祉士と一緒に社会資源の見学をし、外出のついでに食事などをした。外出のたびにC精神保健福祉士は、Bさんに地域での暮らしをイメージしてもらえるように働きかけた。(問題70)
BさんはC精神保健福祉士と一緒に行動するにつれ、退院に興味を持ち始めたが、「身寄りのない自分は困ったときに誰にも相談できない。心細い」と不安を訴えた。C 精神保健福祉士は、「障害者総合支援法」における地域相談支援に基づくサービスを紹介し、随時、退院後の相談に乗ることとした。(問題71)
退院したBさんは、両親から残された自宅で、上記の支援とホームヘルプサービスを利用して当初生活していた。しかし実際に一人暮らしをしてみると生活上の困難が思いの外大きいことが明らかになり、共同生活援助(グループホーム)を利用することになった。一旦はグループホームに馴染んだかに見えたBさんだったが、そのうちC精神保健福祉士に、「人と一緒に暮らすのは自分にはどうしても向いていない」「にぎやかな感じが苦手」という訴えを漏らすようになった。そこでC精神保健福祉士は、Bさんと相談しながら改めて自宅での生活を検討した。その中で、ある法律の改正で2018年(平成30年)に新設された、居宅における自立した生活を営む上での支援を目的とし、原則1年の期限で訪問と適宜の相談を提供するサービスを利用することとした。(問題72)
(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
 
問題70 次のうち、Bさんがこの時点で利用した制度の名称として、正しいものを1つ選びなさい。
1 行動援護
2 同行援護
3 機能訓練
4 地域移行支援
5 成年後見制度利用支援事業
 
事例文を読み込み、Bの状態像にあった制度を選ぶ問題である。
制度の詳細を知らなくても正解でると思われる。
 
1は、×である。Bに行動援護が必要な状況はない。
2は、×である。Bに視覚障害はないので、同行援護が必要な状況はない。
3は、×である。特にBに機能訓練が必要な事情は認められない。
4は、〇である。退院後の地域生活への移行のための支援をしていることは問題文から明らかである。
5は、×である。判断能力を疑わせるような事情は認められない。

【正解4】

問題71 次の記述のうち、Bさんが利用した制度の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 利用期間は原則無期限である。
2 障害支援区分の区分3以上の者が対象である。
3 家族との同居から一人暮らしに移行した者も対象である。
4 宿泊型自立訓練の利用者は対象である。
5 共同生活援助(グループホーム)の利用者は対象である。
 
問70と問71は、地域移行支援と地域定着支援との違いを聞く問題ともいえる。
Bが利用した制度は、問題文の内容から地域定着支援だと推測できる。
 
1は、×である。地域定着支援の利用期間は概ね6か月程度とされている。
2は、×である。障害支援区分の区分3以上とするとかなりハードルが高くなる。Bが利用した制度は、「障害者総合支援法」における地域相談支援に基づくサービスであり、Cが随時、退院後の相談に乗るというものである。障害支援区分の区分3未満の者でも利用できると考えるのが素直である。
3は、〇である。知らなければ△にして次に進む。
4は、×である。宿泊型自立訓練の利用者であれば、そこで相談をすればいい。
5は×ぽい。共同生活援助(グループホーム)の利用者であれば、そこで相談をすればいい。

【正解3】

ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
上記解説は、一定の知識があることを前提にした解き方になっているが、仮に地域定着支援を知らなかった場合には、自分でBが利用したサービスについて問題文から特徴を推測して、その上で想像力を働かせて解くしかない。
勘の鋭い人なら、それだけでも選択肢を絞れたのではないかと思われる。
※ちなみに、地域定着支援の対象は、地域生活を継続していくための常時の連絡体制を確保して、緊急時等の支援体制が必要と見込まれる者である。

 

問題72 次のうち、このサービスを利用する際に必要な手続として、正しいものを 1つ選びなさい。
1 日常生活自立支援事業の利用
2 障害支援区分の認定
3 自立支援医療(精神通院医療)の受給
4 サービス等利用計画の作成
5 指定通院医療機関への通院
 
Bが利用したのは、Bは自立生活援助を利用したと推測できる。なお、ある法律とは、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律である。
自立生活援助については、マイナーな知識だと思われるが、見方によっては、簡単な問題ともいえる。Bの現状を事例から推測し、消去法で選ぶことができる。
 
1は、×である。Bの現状で、日常的な金銭管理や福祉制度の利用支援を必要とする記載はない。日常生活自立支援事業とは、そういうサービスである。
2は、×である。自立生活援助の利用に、障害支援区分の認定は必要ない。迷うようなら△にしておく。
3は、迷った人がいるかもしれない。しかし、事例をよく読んで欲しい。「居宅における自立した生活を営む上での支援を目的」のサービスであり、医療でないことは明確である。
4は、知識がないと判断しづらいが、これが〇である。Bの利用したサービスは「原則1年の期限で訪問と適宜の相談を提供する」ものであるから、このサービスを利用する際に、「サービス等利用計画の作成」を必要とすることにも合理性がある。
5は、×である。このような要件は課されていない。もっとも、指定通院医療機関というのは医療観察法の用語であるが、Bに医療観察法が適用されるような状況も認められない。

【正解4】

ソーシャルワンカーと一緒にワン🐾ステップUP‼
自立生活援助とは・・・
2018年4月に施行された改正「障害者総合支援法」で新たに創設されたサービスで、知的障害者や精神障害者などで、地域で一人暮らしを希望する人に対し、地域において自立した日常生活、または社会生活を営むことができるよう、一定の期間にわたり定期的な巡回訪問(居宅訪問)や随時の対応により、円滑な地域生活に向けた相談・助言などを行う事業。
 
<主な対象者>
①施設や施設などから退所・退院した人
②すでに地域で一人暮らしをしていて支援が必要な人
③障害、疾病などのある家族と同居していて、今後、一人暮らしを希望する人