29.精神保健福祉に関する制度とサービス(R元年-第22回)2/2

問題 67 「医療観察法」における鑑定入院に関する次の記述のうち, 正しいものを2つ選びなさい。
l 医学的観点から「医療観察法」に基づく入院による医療の必要性について意見をまとめる。
2 検査・診断のみならず. 精神科治療も行われる。
3 「精神保健福祉法」で規定された指定病院において実施される。
4 入院期間は, 原則4週間が限度とされている。
5 鑑定は, 精神保健審判員が実施する。
(注)1 「医療観察法」とは,「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。
2 「精神保健福祉法」とは. 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
 
鑑定入院は、あまり聞きなれない入院である。
ただ、言葉の感じから概ねのニュアンスは分かるのではないだろうか。
鑑定入院は、指定入院医療機関ではなく、鑑定入院医療機関で実施されます。従って、3は×である。4の入院期間は、初回審判の場合には2ヶ月間(必要に応じて1ヶ月の延長可能)、初回以後の審判で鑑定入院をする場合には1ヶ月間(必要に応じて1ヶ月の延長可能)という上限が定められています。5の鑑定は、裁判所の指名によって精神保健判定医(もしくは同等の学識経験を有する者)のなかから選ばれた鑑定医によって行われます。

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鑑定入院とは
保護観察所の長等により申立を受けた地方裁判所の裁判官が、必要があると認めるとき、鑑定その他医療的観察のため、当該対象者を入院させ一定の間、在院させる旨を命ずることができる。(医療観察法第60条)これによる入院のこと。

【正解1,2】

問題 68 次のうち. 厚生年金保険加入者で, 障害厚生年金3級の障害よりやや程度の軽い障害が残ったときに支給されるものとして, 正しいものを1つ選びなさい。
1 療養給付
2 特別障害給付金
3 障害手当金
4 特別障害者手当
5 障害補償給付
 
障害厚生年金は3級まで給付がある(※障害基礎年金は2級までである)。本問で問われているのは、そこに至らない場合にも支給されるものが何かである。
年金保険の保険給付について問うものであり、実務的には大切な知識である。少し細かい気もするが、個人的にはこのような知識は極めて大切なものだと感じている。
これは3の障害手当金である。障害厚生年金3級に達しない、いわば「4級」と言える障害の場合に、年金ではなく一時金として支給されるもので、その額は、報酬比例の年金額(3級障害厚生年金)の2年分で、最低保障額は現在約115万円(3級障害厚生年金の最低補償額の2年分)となっている。
1の療養給付、5の障害補償給付は、労災保険の給付であり、本問では的外れである。なお、療養給付を医療保険からの給付と考える余地もあるが、結論は変わらない。2の特別障害給付金は、国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者の方について、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情にかんがみ、福祉的措置として創設されたものである。過去問でも問われたことがある(⑰-問64など)。4の特別障害者手当は、精神又は身体に著しい重度の障害があるために、日常生活において常時特別の介護が必要な20歳以上の在宅障害者に支給される手当である。

【正解3】

問題 69 次のうち, 質的調査の方法として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 多変量解析法
2 コホート調査
3 エスノグラフィー
4 実験計画法
5 折半法
 
ズバリ、質的調査を探せるか、それとも量的調査などを消去できるかということになります。
質的調査の反対語は、もちろん量的調査です。
設問の中で質的調査の方法として適切なものは、3のエスノグラフィーである。社福㉚-問90でエスノメソドロジーが出題されたことがある。知らない場合は、量的調査と親和性が高いものを消去して解けないかを考えてみるとよい。1,4,5はそうした観点から×だと推測することができる。2のコホート調査は、大雑把にいうと、特定集団の時間的変化を標本調査・分析するものである。特に質的調査の方法を意味するものではないので、本問では適切ではない。㉑-問69で出題されている。

ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
エスノグラフィーは、文化人類学や社会学、心理学で使われる研究手法の1つで、 もともとは、対象となる部族や民族の「文化」における特徴や日常的な行動様式を詳細に記述する方法を指す。精神障害者の当事者研究場面を収録し、エスノメソドロジーの手法によって分析することが行われている。
コホート(コーホート)は、統計学や人口学において、年齢や性別などの共通属性をもつ人口群をさす。

【正解3】

(精神保健福祉に関する制度とサー ビス ・ 事例問題)
次の事例を読んで. 問題70から問題72までについて答えなさい。
〔事 例〕

Kさん(45歳男性)はグループホームに居住している。Kさんは双極性障害を抱えているが, 近頃, 服薬が滞りがちになり不穏になっていた。先日,「確実に成功する事業を思い付いた。融資を頼むために銀行に行ってくる」と大声で騒ぐ状況となった。異変に気が付いたグループホームのスタッフになだめられながら, かかりつけの精神科病院で精神保健指定医による診察を受けた。その結果, 自傷他害のおそれはないものの医療と保護の観点から急速に入院が必要な状態と判断されたが, Kさんは入院には同意しなかった。唯一の身寄りである逮方に住む妹とはすぐには連絡が取れず,最終的に72時間に限った入院となった。(問題70)
二日後, 駆けつけた妹によって同意が得られ, 入院形態が切り替わった。しかし,Kさんの不穏な状態は続いており, 躁状態も治まらず, 一般の病室では治療の継続が困難と判断され, やむを得ず, 本人の意思では退出することができない個室において,12時間以上の治療処置がなされることとなった。(問題71)
Kさんには, その都度入院に関する説明が行われていたが, 状況は十分には把握できていないようで, 担当となったL精神保健福祉士に対して,「何で入院しなければならないんだ」と立腹していた。
入院から 3 週間後, 薬物療法によって Kさんの病状は落ち着き, 通常の閉鎖病棟の一室に移った。 Kさんの病状が安定してきたこともあり, 入院について改めて説明する機会を設けることとなった。L精神保健福祉士は医師と共にKさんのところに行き,今回の経緯と, 入院中の諸権利に関する文書について時間をかけて丁寧に説明した。(問題72)
Kさんは完全には納得していないようだったが,「ともかく, こうやって入院中にできることと, できないことを話しに来てくれたのは一応よかったです」と語ってくれた。
 
問題 70 次のうち, この入院形態に関する記述として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県知事の権限によって行われる。
2 定期病状報告を提出しなければならない。
3 市町村長の同意による入院が可能である。
4 緊急その他やむを得ない場合には, 入院の必要性を判定する診察は, 特定医師でも可能である。
5 地方裁判所の裁判官の命令によって行われる。
 
(問題70)の段落から、精神保健指定医の診察を受け、自傷他害のおそれはないが急速に入院が必要な状態であること、本人または家族の同意が得られないこと、入院は72時間に限られることがわかる。
これに該当する入院形態は、応急入院である。応急入院に関する記述として正しいものは、4である。なお、特定医師の場合、入院時間は12時に限られる(精神保健福祉法33条の7第2項)。入院形態に関する問題であるが、意外とややこしい。①任意入院、②措置入院、③緊急措置入院、④医療保護入院、⑤応急入院の各々特徴と違いについて整理しておく必要がある。なお2の定期病状報告医療保護入院措置入院において必要とされる※なぜ、そうなのかも考えてみるとよい。

【正解4】

問題 71 次のうち, この処置の要否の判定を行うものとして, 正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県知事
2 精神保健指定医
3 行動制限最小化委員会
4 地方精神保健福祉審議会
5 特定医師
  
(問題71)の段落から、妹の同意によって医療保護入院に切り替わったことがわかる。
そして、この処置とは、本人の意思では退出することができない個室で行われた12時間以上の治療処置を指している。このような患者の隔離その他の行動の制限は精神保健指定医が必要と認める場合でなければ行えない(精神保健福祉法36条3項)。

【正解2】

問題 72 次のうち,この書面に含まれている内容として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 信書の発受について制限を受けること
2 都道府県その他の人権を擁護する行政機関職員との面会が病状に応じて制限を受けること
3 原則として開放処遇となること
4 退院の申出があっても72時間以内に限り入院継続もあり得ること
5 退院請求についての連絡先
 
難問といえます。
この書面とは、「入院中の諸権利に関する文書」であることがわかる。前問で述べたように、入院形態は医療保護入院に切り替わっている。入院中のKは都道府県知事に対して退院を請求することができるので(精神保健福祉法38条の4)、この文書には5の「退院請求についての連絡先」が記載されていると推測できる。
この事例問題は精神保健福祉士試験らしい専門知識を問うものであるが、問72については別の観点から正解を導くこともできる。すなわち、この書面は「入院中の諸権利に関する文書」であるから、患者の権利を保護するための記述がなされていると推測できるそこから選択肢を眺めると1,2,4のような行動の制限に関するものではないと考えるのが素直である。そして、残る3と5を比較した場合、Kは病状が落ち着いた後も、通常の閉鎖病棟に移っていることから3は不適切だと推測できる。そこから消去法で5を選ぶことができる。なお、1,2のような制限はそもそも許されないものであるという感覚も大切である。

【正解5】