22.精神保健福祉相談援助の基盤(R元年-第22回)1/2

問題 21 U精神科病院に勤めるA精神保健福祉士は, 担当患者のBさんへの支援が思うように展開できないでいた。Bさんは, 障害年金と親の多額の遺産金で暮らしているが,「お金がない。生活保護を受けられないか」と何度も訴えていた。 A精神保健福祉士は, Bさんが他の患者にお金を貸したり, 欲しいものをすぐに買ったりして無駄遣いをしているのに生活保護を受けたいと主張することを好ましく思っていなかった。 そのため, どうしてBさんが同じ主張を繰り返すのかについて, その背景に何かあるかもしれないということは気になっていたが, いつも一方的な態度をとるBさんを受け入れられず,「遺産金があるので, 生活保護を申請することは難しい」と繰り返し説明していた。
次のうち, A精神保健福祉士が抱く倫理的ジレンマとして, 適切なものを1つ選びなさい。

1 自己決定とパターナリズム
2 専門職的価値と個人的価値
3 バウンダリーとクライエントの利益
4 クライエントの利益と所属機関の利益
5 秘密保持とプライバシー
 
事例を読んで概要を把握し、選択肢と対比させながら慎重に解く。
1は、パターナリズムを倫理的ジレンマとして対置させる点で×ぽい。2は、専門職的価値はわかる。AはBが主張を繰り返す背景を突き詰める事の必要性を感じているからである。だが、一方で、Bの日頃の一方的な態度を受け入れられないことが踏み込んだ支援を妨害している。これをAの個人的価値と考えて、倫理的ジレンマにおける対立する価値(利益)と考えてよいかには疑問が残る。では、Bの考え方を持って対立する個人的価値と考えることはできるか。これは不可能ではあるまい。迷うようなら△にして次に進む。3のバウンダリーは境界線をひくことを意味する。援助職とクライエントが適度な距離を保つことを指している。Aはバウンダリーで悩んでいるとは考えられないので×としてよいだろう。クライエントの利益であるが、Aが生活保護を受給することは難しく、Aの主張を倫理的ジレンマにおいて対立する価値として捉えてよいかには疑問がある。4は、前述した理由に加え、本問では所属機関の利益が不明である。5の秘密保持とプライバシーは本問では問題となっていないので、本肢は×としてよいだろう。もやもや感が残るものの、2を選ぶのがもっとも無難であろうか。このタイプの問題はよく出るが、本問は考えれば考えるほど、迷いが生じる可能性がある。

【正解2】

問題 22 福祉サービスを提供する際のリスクマネジメントに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 サービスを提供する際に, 利用者の自立よりも安全を重視する。
2 事故の未然防止の観点から, 利用者に対して均一なサービスを提供する。
3 ヒヤリハット情報やクレー ムから, 潜在的なリスクを抽出する。
4 リスクマネジメントの基本は, 危機管理体制の確立よりも, 個別事故への対応を優先する。
5 利用者から苦情が寄せられた際には, 迅速に対応する。
 
基本問題である。
1は、利用者の自立>安全と考えられるので×。2は、それなりによさそうな記述になっているが、福祉サービスにおいて均一なサービスを提供することの意味は明らかではない。3は、ヒヤリハットの情報やクレームを分析して、重大事故につながる可能性のあるリスクを探ろうとするものであり、リスクマネジメントに関する記述として適切である。4は、個別事故への対応は大切だが、それでは場当たり的な対応となってしまう可能性が高い。リスクマネジメントのためには危機管理体制の確立が大切であり、個別事故への対応を優先することを基本とする本肢の見解には違和感が残る。5は、特に問題のない記述であり、リスクマネジメントに関する記述として適切である。

【正解3,5】

問題 23 ソーシャルワークの理論の発展に貢献した人物とそのアプローチに関する次の記述のうち. 適切なものを1つ選びなさい。
1 カプラン(Caplan, G.)は,ソーシャルワークに生態学的な視点を導入し, その実践モデルをエコロジカルアプロー チとした。
2 ジャーメイン(Germain, C.)は, クライエントの心理的側面や生活史を重視し,診断主義アプローチを提唱した。
3 トール(Towle, C.)は. 家族療法の各流派の知見を統合し, 多元的な家族中心アプローチを構築した。
4 トーマス(Thomas, E.)は, 学習理論の応用に基づく多様な行動変容の方法を整理し, 行動変容アプローチとして確立した。
5 ハートマン(Hartman, A.)は, 危機の状況から効果的で早急に脱出することを目的とした危機介入アプローチの基礎を築いた。
 
人物に関する知識がないと解くのは難しい。
1は、すぐに思い出せなければ△にして次に進む。ちなみにカプランは危機介入アプローチを構築した人であり、5の説明部分とつながる。2は×である。ジャーメインといえばエコロジカルアプローチであり、1の説明部分とつながる。3のトールは少しマイナーである。トールが診断主義アプローチに分類されることを知っていれば、2の説明部分とつながることがわかる。4のトーマスを即座に答えられる人はどの位いるであろうか。知らなければ△にして次に進む。5のハートマンは、エコマップの開発者として有名である。説明部分の危機介入アプローチとはつながらないので本肢は×である。また、ハートマンが家族中心アプローチを構築したことを知っていれば、3の説明部分とつながることがわかる。以上から、交差法も用いて、残る4を選択する。
トーマスに関する知識がなければ、説明部分の記述もうまく利用し、交差法も併用しながらなんとか解くしかない。2のジャーメインが1の説明部分とつながることはわかりやすい。5のハートマンが3の家族中心アプローチにつながること知っていた人は、その段階で答えが推測できる。仮にそれを知らなかったとしても5のハートマンが危機介入アプローチとつながらないことがわかった人は多かったと思われる。その場合、3と4まで絞れる。トールが比較的古い人であることを知っていれば、家族中心アプローチにつながらないだろうと推測して3を×と判断できるので、消去法で4が残る。

【正解4】

問題 24 社会における正義の実現に関する次の記述のうち, 正しいものを 1つ選びなさい。
1 ロールズ(Rawls, J.)が『正義論』で主張した格差原理は, その社会において最も恵まれない人が有利となるよう, 資源の配分を目標とした。
2 キムリッカ(Kymlicka. W.)による多文化主義は. 固有の文化や生活様式を保持するため, 同化政策の確立を目標とした。
3 ベンサム(Bentham, J.)による功利主義は, 人々の直感から得られた快の総量を計り,「最大多数の最大幸福」の実現を目標とした。
4 サンデル(Sandel, M.)によるコミュニタリアニズムは, 自己の在り方を「負荷なき自己」と捉え, 共同体への帰属から自由になることを目標とした。
5 フリーダン(Friedan, B.)らによる第二波フェミニズムは,「個人的なことは政治的なことである」というスローガンの下, 家父長制の維持を目標とした。
 
人物と考え方の問題。知らない人物も多かったのではないか。
1の記述はロールズの主張として正しく、これが〇である。㉚-問22-肢2にそっくりな記述がある。2は、キムリッカを知らなくても、「固有の文化や生活様式を保持」と「同化政策の確立」がつながらないので×ぽい。3は知らないと自信を持って判断しづらい。ベンサムと功利主義のつながりは間違っていないので、これを選んだ人も相当数いたと思われる。4は、サンデルを知らなくても、コミュニタリアニズム(共同体主義と訳される)と「共同体への帰属から自由になることを目標とした」の部分がつながりにくいので、×ぽいと推論できる。5は、フリーダンを知らなくても、「フェミニズム」と「家父長制の維持を目標とした」がつながらないので、×と推測できる。ロールズは、現代社会と福祉を中心に何回か出題されているので、積極法で正解を選びたい問題である。
この科目で本問が出題されたことに驚いた人もいるだろう。科目を問わず出題される問題はこれまでにもあるが、本問は乖離の度合いが大きい。専門科目のみの受験の人は、面食らったのではないだろうか。

【正解1】

問題 25 V精神科病院で薬物依存症者の家族教室を担当しているC精神保健福祉士は, 家族教室に参加したDさんが, 「覚醒剤使用歴がある息子が, 求職活動をしても, なかなか理解してもらえず. 就職できない」と悔しそうに語るのを聞いた。 薬物依存症に対する差別や偏見をなくすことを目的とした家族会の支援をしていたC精神保健福祉士は. 家族教室終了後, Dさんに声を掛け, やりきれない思いを受容するとともに家族会に関する情報提供を行った。 その後,C精神保健福祉士は家族会に参加するようになったDさんと共に. 家族会メンバーと力を合わせて, 薬物依存症のことを理解してもらうための講演会を開催したり, 利用できる新たなサービスを求めるための署名運動を行い, 行政機関に働き掛けたりするようになった。
次のうち,C精神保健福祉士が家族会と共に行った内容として, 適切なものを1つ選びなさい。

1 ソーシャルアドミニストレーション
2 ソーシャルアクション
3 ソーシャルビジネス
4 ソーシャルキャピタル
5 ソーシャルプランニング
 
「講演会、署名運動、行政機関への働き掛け」等がキーワードかな。
C精神保健福祉士が家族会と共に行った内容は、薬物依存症の理解を広めるための講演会の開催、新しいサービスを求める署名運動、行政機関への働きかけである。選択肢の中でもっとも適切なものは、ソーシャルアクションである。

【正解2】

>問題26 対人援助領域におけるレジリエンス(resilience) に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 生活経験の乏しさから発する, 日常生活を送る上での技術の不十分さをいう。
2 精神疾患の病因モデルによる, 人が持っている脆弱性をいう。
3 精神科医療において, 治療を行っても症状が改善しない状態をいう。
4 人に潜在的に備わっている, 逆境から復元できる力のことをいう。
5 利用者が社会参加する際に, 障害となる全てのものを取り除くことをいう。
 
用語の理解の問題。他の用語との比較ではなく、一つの用語がしっかり理解できているかどうかということ。
レジリエンスについて何らかの知識がないと解くのは難しい。反対に知っていれば、大幅に時間を節約できる問題である。
レジリエンスは回復力、復元力、抵抗性などと訳される。対人援助領域におけるレジリエンスの意味として適切なものは4である。レジリエンスの反対の意味がバルネラビリティ(傷つけられやすいこと)であることは興味深い。

【正解4】

問題 27 次のうち,「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成29年3月厚生労働省)の内容として, 正しいものを2つ選びなさい。
1 本人の自己決定に必要な情報の説明は, 本人が理解できるよう工夫して行うことが重要である。
2 意思決定を支援する施設職員と成年後見人がいる場合, 前者の決定を優先する。
3 職員等の価値観において不合理と思われる決定は, 職員の判断で代理決定することが求められる。
4 相反する選択肢を両立させることはせず, 本人にとってどちらが最善の利益かを判断する。
5 本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は, 本人をよく知る関係者が集まって, 様々な情報を把握し, 根拠を明確にしながら意思及び選好を推定する。
 
我が国が、2014年に批准した障害者の権利に関する条約とその後の障害者に対する意思決定支援の考え方が密接に関係していることは意識すべきである。
1は、特に問題のない記述であり〇だと判断できる。2は、必ずしもそのようには言えまい。施設職員には法的な同意権、代理権はないからである。×である。3は×である。4は、「相反する選択肢を両立させる」ような場合があってもよいと考えられる。そのような場合も含めて、意思決定を支援するということだろうから、×ぽい。本人の自己決定や意思確認がどうしても難しいときは、5のように対応するのは一つの方法であろう。5は〇ぽい。  

【正解1,5】