16.相談援助の理論と方法(R2年-第33回)1/3

問題98 次の記述のうち,人と環境との関係に関するソーシャルワーク理論として, 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 リッチモンド(Richmond,M.)は,「人」,「状況」,「人と状況の相互作用」の三重の相互関連性を説いた。
2 ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)は,生態学的視座に立ち,人が環境の中で生活し,社会的にも機能していると説いた。
3 ホリス(Hollis,F.)は,パーソテリティの変容を目指し,人と環境との間を個別に意識的に調整すると説いた。
4 バートレット(Bartlett,H.)は,人々が試みる対処と環境からの要求との交換や均衡を,社会生活機能という概念で説いた。
5 ジャーメイン(Germain,C.)は,クライエントの環境は,アクション・システムなど,複数のシステムから構成されると説いた。
 
簡単そうで難しい。過去問で関連する問題は多数出ているが、毎回選択肢の内容は微妙に異なっている。
㉕問101に類題がある。関連する知識は、㉗問98で出題されているが、問題文の中に社会生活機能という言葉は出ていない。
 
1は、×である。「人」,「状況」,「人と状況の相互作用」の三重の相互関連性からクライエントの問題を捉え、「状況の中の人間」という視点を重視するのは、心理社会的アプローチ(ホリスなど)である(㉚問103参照)。自信がなければ△にして次に進む。
2は、×である。「生態学的視座に立ち…」の部分は、5のジャーメインに関するものである。
3は、×である。ホリスといえば、 心理社会的アプローチ状況の中の人というキーワードが思い浮かぶであろうが、診断学派の人である。この立場からは「人と環境との間を個別に意識的に調整する」との部分が、適切ではない。
4は、知らないと悩む。バートレットといえば、『ソーシャルワーク実践の共通基盤』価値知識介入ソーシャルワークの共通基盤として提示したことで有名である。
もっとも、社会生活機能というキーワードがバートレットのものであることを知っていた受験生は少なかったと思われる。
5は、×である。選択肢の内容について述べたのは、ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)である。

【正解4】

 

ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
この類の問題に対処するには、過去問で気になる用語を抜粋し、体系化する(自分なりにまとめる)のがいいのではないかと思われる。
単に、問題を解いて〇か×かを判断するという学習だけでは、記憶に定着しにくい。
ただ、こうした勉強をすべての事項について行って欲しいということではない
ちなみに、筆者がこのタイプの問題に強くなったのは、(合格した後に)大学院でソーシャル・ワークの授業を聞いてからであるが、この際、体系立てて学ぶ有効性を実感した。

 
問題99 家族システム論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 家族内で生じる問題は,原因と結果が円環的に循環している。
2 各家族員の分化度が高いほど,家族内において相互依存が生じる。
3 家族の内と外は,区別されず連続している。
4 ある家族の全体が有する力は,各家族員が持つ力の総和に等しい。
5 多世代家族において,一つの世代の家族の不安は,別の世代の家族に影響を与えない。
 
家族システム論も過去問で出題されている。
肢2から肢5までの選択肢は、推論で×であることを判断できる。消去法で正解できる。
 
1は、〇である。家族システム論の特徴といえば、原因結果 円環的循環である。
2は、×である。各家族員の分化度が高ければ、相互依存は生じにくい。
3は、×である。家族の内と外が区別されずに連続しているなら、わざわざ家族システムを問題にする意義が乏しい。
4は、×である。この類の議論は、全体が有する力が個々の構成員の持つ力の総和を超えることに意義がある場合が多い。1+1が2であることを論じてもあまり意義がないということである。
5は、×である。一つの世代の家族の不安は,別の世代の家族に影響を与えるからこそ、家族システムを想定する意味がある。

【正解1】

 

問題100 事例を読んで,エコシステムの視点に基づくEさんへのFソーシャルワーカー(社会福祉士)の対応として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
U里親養育包括支援(フォスタリング)機関のFソーシャルワーカーは,里親のE さん(42歳,女性)宅へ訪問した際,委託を受け養育しているGちゃん(10歳,女児)のことで相談を受けた。Gちゃんは,最近無断で学校を休み,友達のHちゃんと万引きをした。EさんはGちゃんに注意し,諭したが,Gちゃんは二日前に再び万引きをした。Eさんは夫に心配を掛けてはすまないと思い,一人で対処してきたが,自分の里親としての力のなさに失望している。

1 「Gちゃんの万引きがやまなければ,児童相談所に委託の解除を相談してはいかがでしようか」
2 「Gちゃんが通う学校の先生に,Gちゃんの学校での様子について尋ねてみてはいかがでしようか」
3 「Hちゃんとの付き合いが,Gちゃんの問題を引き起こしているのでしょう」
4 「お一人で悩まれずに,Gちゃんのことをご夫婦で話し合われてはいかがでしようか」
5 「Gちゃんに欲しい物を尋ね,買ってあげてはいかがでしょうか」
 
本問は、エコシステムの視点の意味が不明だったとしても、正解を導きうる問題だと考える。
「エコシステムの視点に基づく」の部分がわからなかったとしたら、とりあえずそこは置いておいてソーシャルワーカーとしての適切な対応を考えてみる。
 
1は、×である。この段階で委託の解除を勧めることはソーシャルワークをしていないのに等しい。
2は、〇である。Gに生じている問題の原因を探ろうとするものであり、ソーシャルワーカーの対応として、間違っていない。
3は、×ぽい。Gは2日前にも万引きをしている。つまり、Hと一緒に行ったのとは別に、再び万引きをしており、原因をHのみに求める根拠に乏しい。
4は、〇である。Eはこれまで「夫に心配を掛けてはすまないと思い,一人で対処してきた」とあるが、里親は夫婦が協力し合って行うものなのだから、夫婦での話し合いを勧めることは、間違っていない。
5は、×である。Gの物欲を一時的に充たしても問題が解決するような事案とは思えない。※過去問にも類似した選択肢があったように記憶しているが、不適切な対応とされている。

【正解2,4】

 

ソーシャルワンカーと一緒にワン🐾ステップUP‼
エコシステム(ecosystem)は、もともとは自然界における生物と、それを取り巻く環境が相互作用しながら存続する、生産・消費・分解による循環から成り立つ、バランスのとれたモデル全体を表現したものである。
エコシステムの視点とは、何らかの問題を抱えている事例を、様々な環境(自然環境、社会環境、人間環境)における別々のものとして捉えるのではなく、一体的なシステムとして捉える視点である。
※エコシステムのエコとは、エコロジー(生態学)のエコを指している(問98の肢2参照)

 
問題101 次のうち,ソーシャルワークにおける機能的アプローチに関する記述とし て,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントが被っている差別や抑圧に対抗するため,既存の制度や政策を批判し,これらの変革を目指す。
2 クライエントとのコミュニケーションを通じ,クライエントのパーソナリティの変容と環境との機能不全の改善を目指す。
3 クライエントのニーズを機関の機能との関係で明確化し,援助過程の中でクライエントの社会的機能の向上を目指す。
4 クライエントの望ましい行動を増加させ,好ましくない行動を減少させることを目指す。
5 クライエントの問題の解決へのイメージに焦点を当て,問題が解決した状態を実現することにより,クライエントの社会的機能の向上を目指す。
 
出題の意図がつかめないと解くのが難しい問題である。推論型のように見えながら、実は知識型の問題といえる。
選択肢をすべて読むと、いずれも内容そのものには問題がないことがわかる。つまり、機能的アプローチがわからないと本問は解けない
機能的アプローチ:課題や問題の背景には、クライエントの生活状況がある為、援助者は、自分の属する支援機関の機能をクライエントに提供するという考えを基本に支援実践を行う。

【正解3】

 

ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
正解を導くヒントとして、機能的アプローチが機能学派によるアプローチではないかと推測してみて、選択肢の中に近いものがないかを探してみる方法がある。
当然、機能学派の内容がわからないと意味が無いが、機能的アプローチは、㉒問92に登場している。
過去問学習は、この類の問題にも有効である。

 

問題102 事例を読んで,N市の地域包括支援センターのJ社会福祉士の初回面接の対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
J社会福祉士は,初めて地域包括支援センターに来所したKさん(66歳,女性)の相談を受けた。「娘が結婚して家を出て以来,夫と二人で暮らしてきました。1年前に夫が定年で退職した頃から,夫が塞ぎ込み不眠にも悩まされるようになりました。V病院を受診していますが,一向に良くなりません。私にささいなことで怒鳴ることがあり,どうしたらいいか分かりません」と不安そうに話した。

1 夫婦間の問題であるため,配偶者暴力相談支援センターに相談するよう伝える。
2 夫の不眠の症状を改善させる方法をアドバイスする。
3 Kさんが問題や不安を落ち着いて語れるように心掛ける。
4 V病院にKさんの夫の医療情報を照会する。
5 Kさんに対して地域包括支援センターの役割について説明する。
 
問われているのは、J社会福祉士の初回面接の対応として適切なものはどれかである。
事例の場面が、初回面談(インテーク)であることにも留意すれば、推論で解ける問題である。
 
1は、×である。夫は怒鳴ることがあるものの、この段階で配偶者暴力相談支援センターに相談するよう伝えるのは時期尚早である。
2は、×である。初回面接時はKの話を受容し、共感的態度で接することが肝要と思われる。
3は、〇である。この肢に、解説は無用だろう。
4は、×である。この段階でV病院にKさんの夫の医療情報を照会するのは時期尚早である。
5は、〇である。相談に来たKに地域包括支援センターの役割を説明するのは初回面接の対応として適切であろう。

【正解3,5】

 

問題103 事例を読んで,課題中心アプローチに基づくL指導員(社会福祉士)の応答として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
W自立援助ホームのL指導員は,Mさん(18歳,男性)から将来についての相談を受けた。Mさんは就職をして一人暮らしをしたいと思っているが,求人募集に何度応募しても不採用が続いている。自信を失ったMさんは,「また駄目かもしれないと思うと,面接が怖いです」とうつむいた。

1 「就職活動をする上で,今,何が一番問題だとMさんは思われますか」と尋ねる。
2 「面接が奇跡的にうまくいったとしたら,どのように感じますか」と尋ねる。
3 「面接が怖いのであれば,採用試験に面接がない職場を探しましょう」と提案する。
4 「Mさんが次の面接の日までに取り組む具体的な目標を一緒に考えましょう」と提案する。
5 「大丈夫,Mさんなら自信を持って何でもできますよ」と励ます。
 
本問は課題中心アプローチの特徴を押さえていないと解くのが難しい。
 
1は、〇である。Mの課題が何かを明らかにしようとする質問である。
2は、×である。これは解決志向アプローチで用いられる特徴的な質問方法である。
3は、×である。面接が怖いという課題を避けようとするものであり、課題に焦点を当てているとはいえない。
4は、〇である。課題中心アプローチの特徴に次の面接までに具体的な目標を立てることが挙げられる。本肢はその特徴と合致する。
5は、×である。このような励ましが効果を発揮することもあるかもしれないが、それを課題中心アプローチに基づく応答ということはできない。

【正解1,4】