13.権利擁護と成年後見制度(H30年-第31回)

問題77 生存権に係るこれまでの最高裁判例の主旨に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。
1 厚生労働大臣の裁量権の範囲を超えて設定された生活保護基準は,司法審査の対象となる。
2 公的年金給付の併給調整規定の創設に対して,立法府の裁量は認められない。
3 恒常的に生活が困窮している状態にある者を国民健康保険料減免の対象としない条例は,違憲である。
4 生活保護費の不服を争う訴訟係争中に,被保護者本人が死亡した場合は,相続人が訴訟を承継できる。
5 生活保護受給中に形成した預貯金は,原資や目的,金額にかかわらず収入認定しなければならない。
(注) 判決当時は厚生大臣であったものも厚生労働大臣と表記している。
 
過去の最高裁判例の主旨に関する問題である。法学部の人なら学習した内容かもしれないが、国家試験向けにこの内容を勉強した人は少ないだろう。社会経験や自分の一般知識を集約して考えよう!
1は結論から言えば〇。もし、分からなければ△にして一旦先に進もう。2は立法府の裁量が認められる事項であり×である。3は迷った人が多かったのではないだろうか。「恒常的に生活が困窮している状態にある者」といっても、その理由は様々であろう。私も困窮しているといえなくはない。そうした者について「国民健康保険料減免の対象としない条例」が直ちに違憲とまではいえまい。4は本人が死亡した場合、訴訟を承継できないので×である。有名な朝日訴訟が取った結論である。5は「金額にかかわらず」から×ぽいとした人が多かったであろう。もちろん×である。

【正解1】

問題78 特別養子縁組制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。
1 特別養子は,15 歳未満でなければならない。
2 縁組後も実親との親子関係は継続する。
3 特別養子は,実親の法定相続人である。
4 配偶者のない者でも養親となることができる。
5 養親には離縁請求権はない。
 
特別養子は、法的に実親との親族関係を断ち切るという効果をもった養子縁組である。意義と趣旨については確認しておくこと。
1は、15歳よりももっと幼い年齢だったはず、と思えればいい。×である。2は×である(※なお、特別養子縁組について勉強したことがあれば、肢2を読んで思い出すことができたであろう-ヒントになっているということである)。3は法的に親子関係を断ち切る以上、実親の法定相続人にもならないので(※知らなくても推論できる)、×である。4は配偶者のある者でなければ養親にはなれないので×である。なぜそうなのかは、特別養子縁組の趣旨から考えて欲しい。5は一見おかしな気がするかもしれないが、特別養子縁組の効力から考えると決して不合理ではない。これが〇である。
※特別養子縁組については見直しが検討されているところであり、そういう意味ではタイムリーなのかもしれない。

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特別養子縁組の特徴
特別養子縁組は、様々な事情で、実の親と暮らせない子どもと養親の間で縁組をする制度です。
・縁組を希望する夫婦が家庭裁判所に審判を申し立てて手続きする。
※配偶者のある者でなければ、養親にはなれない。
・縁組が成立すると、法律上は子どもと実親の間の親子関係がなくなり養親と新たな親子関係を結ぶ
・原則として離縁はできない(永続的解決、パーマネンシーと言う)。

ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
令和元年6月7日,民法等の一部を改正する法律(令和元年法律第34号)が成立しました(同月14日公布)。  
特別養子制度に関する主な改正点
①特別養子縁組における養子となる者の年齢の上限を原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げた。(※例外17歳未満)
②特別養子縁組の成立の手続を二段階に分けて養親となる者負担を軽減した
第1段階:適格性確認(実親による養育状況と、実親の同意の有無などを判断する審判)
第2段階:縁組成立(養親子のマッチングを判断する審判)
※実親は第1段階の手続きで縁組に同意した場合、2週間経過した後撤回ができなくなる
※今回の改正は,令和2年4月1日から施行されます。
なお,施行の時点で,既に係属中の特別養子縁組の成立の審判事件については,引き続き改正前の民法及び家事事件手続法が適用。

【正解5】

問題79 事例を読んで,取消訴訟と併せて,Cさんの救済に効果的な手段として,最も適切なものを1 つ選びなさい。
〔事 例〕
重度の身体障害者であるCさんは,N市に対し,「障害者総合支援法」に基づき,1 か月650 時間以上の重度訪問介護の支給を求める介護給付費支給申請をした。それに対してN市は, 1 年間の重度訪問介護の支給量を1 か月300 時間とする支給決定をした。Cさんはこの決定を不服とし,審査請求を行ったが,棄却されたため,N市の決定のうち,「1 か月300 時間を超える部分を支給量として算定しない」とした部分の取消訴訟を準備している。
 
1 無効等確認訴訟
2 義務付け訴訟
3 差止訴訟
4 機関訴訟
5 不作為の違法確認訴訟
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
 
よく似た問題は過去にも出されているが、本問はひねりが効いている。知識がないと解けないようにみえるが、考えて解けた人も多かったのではないだろうか。
問われているのは、「取消訴訟と併せて,Cさんの救済に効果的な手段」である。ここから取消とともに実際に給付を受けられるような訴訟を起こせばよいと考えられればしめたものである。
1は取消訴訟に合わせて無効を確認しても、結局給付にはつながらないので×ぽい。2は取消と合わせて、給付を義務付けてもらえれば効果的である。これが〇であろう。3の差止は本肢では意味をなさないので×。4は機関訴訟の意味が分からなければ△。5は肢1と同様な理由で直接に給付につながらないので×ぽい。
類似の問題を利用してしっかりチェック

【正解2】

問題80 「成年後見関係事件の概況(平成29 年1 月~12 月)」(最高裁判所事務総局家庭局)に示された,2017 年(平成29 年)1 月から12 月の「成年後見開始等」の統計に関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。
1 申立ての動機として最も多かったのは,身上監護である。
2 申立人として最も多かったのは,市区町村長である。
3 開始原因として最も多かったのは,知的障害である。
4 「成年後見人等」に選任された者として最も多かったのは,司法書士である。
5 鑑定期間として最も多かったのは, 2 か月超え3 か月以内である。
(注)1  「成年後見開始等」とは,後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任のことである。
2  「成年後見人等」とは,成年後見人,保佐人及び補助人のことである。
 
細かい出題のような気もするが、最近のトレンドを知っていた人にはラッキーな問題であったろう。
1は、申立ての動機として最も多いのは財産(金)絡みなので×。(制度創設以来、これまでのところ一貫して一番多い理由である)。2の市区町村長は年々増加しいるが、いまのところトップは親族による申立なので×である。3は認知症によるものが一番多いので×である。4は〇である。

親族が選任されるよりも、専門職が選任される割合が多いことは多くの人が知っているであろう。今年は、その専門職の中で何が一番多いかが問われた。がんばれ社会福祉士!

5は2か月以内のほうが多いので×である。

【正解4】

問題81 日常生活自立支援事業の利用等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 成年後見人による事業の利用契約の締結は,法律で禁じられている。
2 法定後見のいずれかの類型に該当する程度に判断能力が低下した本人が事業の利用契約を締結することは,法律で禁じられている。
3 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,事業の一部を市区町村社会福祉協議会に委託することができる。
4 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,職権により本人の利用を開始することができる。
5 契約締結に当たって,本人の判断能力に疑義がある場合は,市町村が利用の可否を判断する。
 
細かい出題にみえるが、基本的なところが問われている。普段読んでいてひっかかる箇所には注意しておく必要がある。
1は、成年後見人が日常生活自立支援事業の利用契約を締結することは可能と考えられているので、×である。被後見人と後見人が離れたところに住んでいる場合にメリットがある。一方、自治体によっては、成年後見制度の利用開始によって、日常生活自立支援事業の終了を求める社協もあるので、実務を知っている人は、場合によって、少々戸惑うかもしれない。2は少なくとも補助ならば可能と考えられ、×ぽい。3は、ずばり○である。実際にも市区町村社会福祉協議会が委託を受けて中心となって本事業を行っている。4は、日常生活自立支援事業は契約によって開始されるので×である。職権により利用を開始することはできない。5の判断をするのは契約締結審査会である
※本問と関連した出題に地域福祉論の㉘-41の肢5がある(必ず見ておいて欲しい)

【正解3】

問題82 事例を読んで,特定商取引に関する法律に規定するクーリング・オフによる契約の解除(解約)に関して,最も適切なものを1 つ選びなさい。
〔事 例〕
一人暮らしのDさんは,訪れてきた業者Eに高級羽毛布団を買うことを勧められ,代金80 万円で購入する契約を締結し,その場で,Dさんは業者Eに対して,手元にあった20 万円を渡すとともに,残金60 万円を1 か月以内に送金することを約束し,業者Eは,商品の布団と契約書面をDさんに引き渡した。
1 Dさんが業者Eに対して解約の意思を口頭で伝えた場合は,解約できない。
2 Dさんは取消期間内に解約書面を発送したが,取消期間経過後にその書面が業者Eに到達した場合は,解約できない。
3 Dさんが商品の布団を使用してしまった場合は,解約できない。
4 Dさんが解約した場合,業者Eは受領済みの20 万円を返還しなければならない。
5 Dさんが解約した場合,Dさんの負担によって布団を返送しなければならない。
 
クーリングオフは久しぶりの出題である。個別にみると細かいが、消費者を保護する法律なのだから、それに即して最もよさそうな肢を選べばよい。
1は×である。口頭でも解約は可能である(※後でもめたときに証明する上での困難さはあるが、それは別の問題である)。2も「取消期間内に解約書面を発送した」なら、解約できると考えるのが素直である。×ぽい。3も、商品の布団を使用しても解約できると考えるのが法の目的に適っている。×ぽい。4は、これかなという内容であり、〇ぽい。5だけ単独で読むと迷う。意地悪な選択肢であるが、4と比較すると、4の方がよさそうな内容である。
※迷うとしたら4か5かであろう。しかし、クーリング・オフが消費者を保護するための制度であることからすれば、4>5と考える方が素直ではないだろうか。

【正解4】

問題83 児童福祉法と「児童虐待防止法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。
1 児童虐待の通告義務に違反すると刑罰の対象となる。
2 立入調査には裁判所の令状が必要である。
3 親権者の意に反し,2 か月を超えて一時保護を行うには,家庭裁判所の承認が必要である。
4 本人と同居していない者が保護者に該当することはない。
5 児童虐待には,保護者がわいせつな行為をさせることは含まれない。
(注) 「児童虐待防止法」とは,「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。
 
各々の選択肢で正誤が分からなくても、消去法もしくは比較法で正解を見つけることが可能な問題である。
1は×である。通告義務に違反しても刑罰までは課せられない。2も×である。犯罪の捜査が目的ではないので裁判所の令状はいらない。3は知らなければ△。知っていればこれが〇だと分かる。4は、普通に考えて同居していなくても保護者に該当する場合はあるだろうと感じるはず。4は×である。5は、保護者であってもわいせつな行為が許されるわけがない。性的虐待も含まれる。5は×である。

ソーシャルワンカーと一緒にワン🐾ステップUP‼
児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律(平成29年6月14日成立・6月21日公布)によって、以下の内容が改正された。
1.虐待を受けている児童等の保護者に対する指導への司法関与(児童福祉法)
家庭裁判所勧告の下での保護者指導(在宅等)の創設し、指導の実効性向上により、良好な家庭養育の確保を実現する。
2.家庭裁判所による一時保護の審査の導入(児童福祉法)
・一時保護の期間は、原則として、一時保護を開始した日から2ヶ月を超えてはならない
・親権者等の意に反して2ヶ月を超えて、一時保護を行う場合には、家庭裁判所の承認を得なければならない
3.接近禁止命令を行うことができる場合の拡大(児童虐待の防止等に関する法律)
接近禁止命令を行うことができる場合
・親権者等の意に反して施設入所等の措置が採られている場合
親権者等の同意のもとでの施設入所等の措置が採られている場合
一時保護の場合

【正解3】