12.保健医療サービス(R元年-第32回)

問題70 日本の医療費の自己負担限度額に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 食費,居住費,差額ベッド代は高額療養費制度の支給の対象とはならない。
2 医療保険加入者が70 歳未満である場合, 二人以上の同一世帯で合算した年額の医療費の自己負担限度額が定められている。
3 医療保険加入者が医療保険と介護保険を共に利用した場合, それらの費用を世帯で合算した月額の自己負担限度額が定められている。
4 医療保険加入者が70 歳以上である場合, 入院の費用に限り世帯単位での医療費の自己負担限度額が定められている。
5医療保険加入者が高額長期疾病(特定疾病)の患者である場合, 医療費の自己負担を免除することが定められている。
 
本問は高額療養費についての基本的な理解があれば解けると思うのだが、受験した人はどう感じただろうか。
1の高額療養費制度の対象は医療費である。食費,居住費,差額ベッド代はその対象にならないので、本肢は〇となる。差額ベッド代は高額になる場合が多いが、選定療養として別途(べっと)請求することができる(患者は自由な意思で選んだものとして扱われる)。2はそのまま正しいとしてしまいそうだが、世帯合算は月単位なので×である。3の医療保険加入者が医療保険と介護保険を共に利用した場合の世帯で合算した自己負担限度額は年単位で判断するので、本肢は×である。4は入院の費用に限らず外来受診も含まれるので×である。5の高額長期疾病(特定疾病)という言葉を知らなかった人もいるかもしれないが、人工透析を継続して受けるような場合がこれにあたる。この場合は自己負担の月額を定額にして対応している。免除されるわけではないので本肢は×である。 

【正解1】

問題71 医療施設等の利用目的に関する次の記述のうち, 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護医療院の利用は, 主として長期にわたり療養が必要である要介護者を対象としている。
2 療養病棟の利用は, 急性期で医療的ケアが必要である者を対象としている。
3 地域包括ケア病棟の利用は, 病院で長期にわたり医療的ケアが必要である者を対象としている。
4 介護老人保健施設の利用は, 高度で濃密な医療と介護が必要である者を対象としている。
5 回復期リハビリテーション病棟の利用は, 高度急性期医療を受けた後, 終末期と判断された者を対象としている。
 
高齢者福祉施設の相談員にとっては簡単な問題だが、現役の学生はどう感じただろうか。
医療機関のタイプを聞く問題は過去問にもあるが、新しい介護医療院や地域包括ケア病棟が混ぜられているところに特徴がある。地域包括ケア病棟について詳しく知っている人は少ないであろう。積極法で正解したいところである。
1は〇である。2018年の改正介護保険法で登場した新たな介護保険施設の一つである。同改正の目玉であり、前年の試験でも出題されている(㉛-問44)。2は「療養病棟」と「急性期」がかみあわないので×。3の地域包括ケア病棟は「病院で長期にわたり」の部分が×。地域包括ケア病棟が㉚-問71で登場したときはびっくりしたが、今回は2度目なので驚かなかった。4は「介護老人保健施設」と「高度で濃密な医療」がかみあわないので×。5は「回復期リハビリテーション」と「終末期」がかみわないので×。

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地域包括ケア病棟:2014年4月の診療報酬改定で新設された病棟。主な役割は次の3つ。
①急性期からの受入れ(ポストアキュート機能)
②在宅復帰支援
③緊急時の受入れ(サブアキュート機能)

【正解1】

問題72 特定健康診査及び特定保健指樽に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 特定健康診査及び特定保健指導の対象年齢は, 40 歳以上60 歳以下である。
2 特定保健指導の目的は, 糖尿病等の生活習慣病の予防である。
3 特定健康診査の目的は, がんの早期発見である。
4 特定健康診査の結果は, 結果に問題がなければ保険者から受診者への通知を省略することができる。
5 特定健康診査は, 被用者が同じ内容の事業者健診を受けていても, 改めて受けることが義務づけられている。
 
会社勤めをしていて実際に特定保健指導を受けた人には簡単な問題だったろうが、現役の学生は苦戦したのではないだろうか。
もっとも特定保健指導は定評のある参考書には掲載さており、それが何かをイメージできれば積極法で答えは出せた問題だといえよう。似たような名称を区別できるようにしておこう。
1は、覚えていないと自信をもって答えられない。△にして次に進む。2はずばり〇である。3は×である。ここで前の肢と比較すると「特定保健指導」「特定健康診査」との用語の違いに気づく。4は、特定健康診査の結果は大切な情報なので結果に問題がなくても通知すべきではないかと感じる。×ぽい。5は、被用者が(会社で)特定健康診査と同じ内容の事業者健診を受けていれば、改めて受ける必要はないと考えるのが素直であろう。×ぽい。2が特定保健指導となっていること(3,4,5と違う)に気づけただろうか。特定健康診査のほうは㉛-問72㉚-問48㉙-問4で出されている。一方、特定保健指導は㉙-問4に登場している。

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特定健康診査とは
通称「特定健診」のことであり、生活習慣病の早期発見と予防をするためのメタボリックシンドロームに着目した健康診断こと。
特定保健指導とは
特定検診の結果によって、生活習慣の改善が必要な方に対しては、医師・保健師・管理栄養士等が実施する「保健指導(特定保健指導)」のこと。

【正解2】

問題73 「地域における保健師の保健活動に関する指針」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 地域住民に対して, 生活習慣病の三次予防に重点を置いた指導を行う。
2 地域住民に対して, 保健師が主体となって地域の健康づくりを促進する。
3 産後に抑うつ状態の可能性が高いと判断される養育者に対して, 受療指示を行う。
4 担当地域の市町村地域防災計画を策定する。
5 地域診断を実施し, 取り組むべき健康課題を明らかにする。
(注) 「地域における保健師の保健活動に関する指針」とは.「地域における保健師の保健活動について」(平成25 年4 月19 日健発0419 第1 号厚生労働省健康局長通知)で示された指針のことである。
 
「地域における保健師の保健活動」という言葉からイメージされるものは、特定の地域において保健医療に関する知識を持った保健師の地域住民の健康づくりのための予防的な活動である。
1は三次予防となっているの×。2はとりあえずよさそう。3のような受療指示は先のイメージと離れるし「指示」という部分もひっかかる。×ぽい。4は、防災は違うだろうと感じる。×ぽい。5はとりあえずよさそう。2と5に絞って比較する。2は「保健師が主体となって」の部分がひっかかる。これに対し、5はかなりたいへんそうだな(実際にできるの)という感じがする。答えは割れたと思われる。保健師は、所定の専門教育を受け、地区活動や健康教育・保健指導などを通じて疾病の予防や健康増進など公衆衛生活動を行う地域看護の専門家である。ここが理解されていれば、「保健師が主体となって」という部分がひっかかる2よりも、高度な内容であるが5のほうを選んだほうがよいと感じられたかもしれない。

【正解5】

問題74 訪問リハビリテーションを行う際の理学療法士の業務に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 処方薬を服用する患者とその家族に対して, 服用方法の指導をする。
2 中心静脈カテーテルが挿入された患者に対して, カテーテルを抜去する。
3 人工呼吸器を装着した患者に対して. 気管カニューレを交換する。
4 脳梗塞後遺症による筋麻痺(まひ)の患者に対して. 医師の指示の下にマッサージをする。
5 高カロリー輸液を点滴中の患者に対して, 輸液の投与量を調整する。
 
理学療法士(PT)のイメージがあれば解けるだろう。 
1のような行為は医師や薬剤師でなければ行えない。×である。2のカテーテルの抜去も医師や医師の指示のもとに看護師でしか行えない。×である。3も同じく×である。4は〇であろうと判断しやすい。5のような行為は医師や医師の指示のもとに看護師でしか行えない。速やかに答えを選んで時間を稼げる問題である。
リハビリ三職種(PT、OT、ST)の理解は必須である。コメディカルであるが、医療行為は行えない名称独占であることに注意しよう。肢4は「マッサージ」で悩ませようとしたのかもしれない。しかし、他の肢は明らかに×なので、勘繰り過ぎないようにしよう。

【正解4】

問題75 事例を読んで, K医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)による終末期のLさんの家族への対応として, 最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Lさん(58歳, 男性)は, 末期の肝臓がんであるとの告知を受け, 現在入院中である。主治医からK医療ソーシャルワーカーに, Lさんの今後の療養について意思確認をするよう依頼があった。そのため, Lさんの下を一度訪れたが, 現段階では決められないとLさんに面接を断られた。そこでK医療ソーシャルワーカーは, Lさんの了承を得た上で家族と面接を行った。
1 Lさんに意思の確認のための面接を断られたため, 今後のLさんとの面接を中止すると伝えた。
2 Lさんの人生観や価値観, 生き方などを家族から把握することは控えた。
3 Lさんの家族の意見がまとまらない場合, 主治医の意見を優先する旨を家族に伝えた。
4 Lさんの意思決定支援を今後どうすべきか家族と話し合った。
5 Lさんの意思を推定する責任が, 家族にある旨を伝えた。
 
Lさんが終末期にあることをしっかりと念頭に置きながら解く。
ソーシャルワーカーとしても最も適切なものを選ぶ点がポイント。
1の対応はソーシャルワーカーとしてはもちろんのこと、人としてもかなり未熟な対応である。×である。2も不適切だろう。時間はもうないのである。ましてや、Lさんからは、家族と面接を行う了承も得られているのだから、控える理由が見つからない。3のような対応ではソーシャルワーカーとして、何の調整もしてないとの誹りを受けても仕方ないであろう。×である。4はとりあえず無難な内容である。5は、Lさんが意思を表明しない場合、家族がLさんの意思を推定しないといけない場面は否定できないように思う。しかし、責任がある訳ではない。それに、本問のLさんは面接を断ったものの、まだ自ら意思を表明できる状態にあるし、今後の関わり方次第で面接に応じてくれる可能性も十分にある。

【正解4】

問題76 事例を読んで,医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が行う退院支援に関する次の記述のうち,この段階における対応で,適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
先天性代謝異常の疾患に罹患(りかん)しているMちゃん(生後8か月)は呼吸器を装着し頻回の吸引が必要でありバルーンカテーテル,経管栄養を使用している。出生以来, NICU (新生児集中治療室)に2か月,小児病棟に6か月入院してきたが,主治医からの退院許可を受け,自宅での生活の準備を始めることになった。出生以来,Mちゃんの見舞いを欠かさずしてきた両親は,初めて自宅でMちゃんと一緒に生活することに喜びを感じていた。一方で病院から離れることに不安を感じ,これまで相談に乗っていた医療ソーシャルワーカーに不安を打ち明けた。
1 医療的ケア児等コーデイネーターとの連携を検討する。
2 両親に特別障害者手当を申請するよう勧める。
3 訪問看護ステーションと両親を交えたカンファレンスを実施する。
4 両親に医療型障害児入所施設の空き状況を伝える。
5 これまでも同様の患者がいたことを伝え,心配する必要はないと両親を励ます。
 
このタイプの問題は、自分が勉強してきたことを信じて当該医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)になった気持ちで解くとよいのではないだろうか。
この事例で両親が不安を抱えているのは、自宅に戻った場合に自分たちで対応できるのかというものであろう。
呼吸器を装着している上に、頻回な吸引が必要で、さらにバルーンカテーテル,経管栄養などの処置を施されているため、もっともな心配であるが、その一方で、本問では「主治医からの退院許可」が出て,自宅での生活の準備を始める段階にあることも忘れてはいけない。
1は両親の不安に沿った打開策の一つでありよさそう。2は間違いとまでは言えないかもしれないが、本問での両親の不安に沿ったものとはいえないであろう。迷うようなら△にして次に進む。ちなみに特別障害者手当が20歳以上の人を対象としたものであることを知っていれば、自信をもって×とできる(者と児の違いは大きい!)。3は先の1と同様に両親の不安に沿った打開策の一つでありよさそう。4であるが、両親は毎日病院に見舞いに訪れており、「初めて自宅でMちゃんと一緒に生活することに喜びを感じていた」とある。両親が病院から離れることへの不安を打ち明けただけで、いきなり医療型障害児入所施設を勧めることは適切とはいえないだろう。×ぽい。5は、これまでにも同じような心配を抱えた人がいたことを伝えるのはまだ許されるとしても、「心配する必要はないと励ます」ことは専門職として雑過ぎる対応といえないだろうか(受容共感もない感じ)。

【正解1,3】