第21回 精神疾患とその治療 1/2
問題1 神経系の構造に関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。
1 末梢神経系は脊髄と末梢神経からなる。
2 間脳は視床が大部分を占める。
3 脊髄の上端は小脳に続く。
4 錐体路は脊髄で交叉(こうさ)する。
5 大脳基底核は大脳皮質にある。
基本的知識があれば、2択までは絞れる。一方で、知らないと解くのは難しいであろう。
1は、脳と脊髄が中枢神経であることを知っていれば、容易に×と判断できる。2であるが、これが〇である。知っていれば即答できるが、知らなければ△にして次に行く。3は、少なくとも脊髄の上端が小脳に続くのはおかしいと気づいた人が割合といたと思われる。上端は延髄につながっている。×である。4は知らないと正しいか否かが判断できないであろう。5の大脳基底核は、名前からして大脳の深い部分(下の方)にあると推測できる。大脳皮質は脳の表面なので、これは×だと判断できる。
【正解2】
問題2 次のうち,パニック障害でみられる症状として,正しいものを1 つ選びなさい。
1 強迫行為
2 体感異常
3 幻視
4 チック症状
5 閉所恐怖
パニック障害でみられる症状は、5の閉所恐怖である。
パニック障害に関連した問題は、⑰-6、⑲-6で出題されている。
本問は、その症状をより具体的に問うものである。過去問学習で単に問題とその答えを覚えるという勉強だけでは解けなくなっている。ちなみに、広場恐怖もパニック障害でみられる症状である。本問はあえて閉所恐怖としているところが心にくい出題といえる。ちなみに、知らなくても1,3,4が×であることに気づけた人は多かったのではないかと思われる。
【正解5】
問題3 次のうち,重篤で進行性の身体疾患に罹患している可能性への頑固なとらわれが主な症状である疾患として,正しいものを1 つ選びなさい。
1 心気障害
2 神経衰弱
3 身体化障害
4 離人・現実感喪失症候群
5 身体表現性自律神経機能不全
心気障害について知らないと正解を出すのは難しかったと思われます。しかし、問題文から推測して、2と4が×だと気づけた人は多かったであろう。「重篤で進行性の身体疾患に罹患している可能性への頑固なとらわれ」とは、自分は重い病にかかっていて、どうにもならないと思い込んでいるような人のことである。このような症状が主である疾患として相応しいものは1の心気障害である。
【正解1】
<知識のワンアップ>
身体表現性自律神経機能不全は、いわゆる自律神経失調症と呼ばれる状態に近いものです。
患者は、自律神経によってコントロールされている器官や系統の不調を示します。例えば、心血管系や消化器系、呼吸器系、時として生殖器泌尿器系に不調があると訴えるのです。
このような問題を復習するときですが、選択肢の中で似たようなものがどのように分類されているのかを調べてみると役立つ情報が得られる場合があります。
例えば、ネットで下記の図のようなフローを確認することができます。これらを活用することで体系化できれば、記憶にとどめておくことが容易になるのではないでしょうか。
問題4 患者の訴えと症状に関する次の組合せのうち,正しいものを1 つ選びなさい。
1 「気を失うかと思った」―――――――――――――――――― 抑うつ気分
2 「大切にしていた着物を家族に盗まれた」―――――――――― 貧困妄想
3 「車を運転したときに交通事故を起こしたような気がする」―― パニック発作
4 「隣の家の人が電磁波攻撃を仕掛けてくる」――――――――― 被害妄想
5 「誰もいないのに人の声が聞こえてきた」―――――――――― 強迫観念
精神疾患には、主要な症状がある。本問はその症状の内容を問うもの。
1のような訴えは抑うつ気分とは異なるので×でる。2は被害妄想であり×である。3の訴えは、車の運転という行為に付随して、交通事故を起こしたような特定の気持ちが生じるというものであり、パニック発作とは異なるので×である。4は、ずばり被害妄想であり、〇である。5は、一般に幻聴と呼ばれるようなものであるが、思考化声(考想化声)だとすれば統合失調症の症状である。強迫観念とは異なるので×である。
この類の問題は、普段から各種の症状について意識しておかないと間違える可能性がある。単に病名と症状をつなげるだけでなく、症状そのものについて具体的にイメージできるようにしておくことが大切である。
【正解4】
<知識のワンアップ>
被害妄想は、統合失調症、認知症、アルコール・薬物関連障害などでみられる。
貧困妄想は、心気妄想、罪業妄想とともにうつ病の三大妄想とよばれる。
パニック発作は、特段の理由もなく、急激に不安が高まる状態である。
問題5 次の記述のうち,うつ病患者の訴えとして,適切なものを1 つ選びなさい。
1 ただならぬ災害が起ころうとしていることが分かる。
2 街で人と擦れ違った瞬間に,「私は神だ」と確信した。
3 自分は,誰か他人の意思によって操られている。
4 自分の体と他人の体の区別が曖昧になった。
5 自分は過去に重大な罪を犯したので,罰を受けている。
うつ病の特徴を意識しながら、または、統合失調症などの他の精神疾患と差異を意識しながら、各肢を検討すればよい。
1は、突然このような考えが思い浮かぶのは、通常はないと思われるので×ぽい。2も同様に×。3も同様に×。4もうつ病患者の訴えとしては遠いので×ぽい。5のような訴えは、うつ病患者がその原因を自分の過去のことと絡めて論じているので〇ではないかと推測できる。何らかの理由で気分が大きく落ち込んでいるときに、5のような気持ちが生じることは通常の人でも起こるのではないだろうか。
関連する過去問に⑮-5、⑳-2があります。(参照)(2019.12.15)
【正解5】
<知識のワンアップ>
シュナイダーは、躁うつ病との症状比較から、統合失調症の一級症状という症状を観察し次のようにまとめました。
①思考化声(考えていることが声になって聞こえてくること)
②対話性幻聴(複数の人が会話している声が聞こえること)
③自分の行為を批判する幻聴
④身体的影響体験(体の中でなにかが動く、電波や光線に体が痛めつけられるなどの体験)
⑤思考奪取(考えが抜き取られるという体験)
⑥思考吹入(考えが外から吹き込まれるという体験)
⑦思考伝播(自分の考えていることが周囲の人に知られているという体験)
⑧妄想知覚(人が咳をしたのは、自分のことを嫌っているからだなどというように、知覚したことに、特別の意味づけをすること)
⑨作為体験(思考、感情、意欲の面で自分の体験があたかも他者からさせられたように感じる体験)
などです。こうしたの考えの多くは、自分の意識があたかも自分のものではないという感じを表すものです。